(ランタンフェスティバル……、あった!これだ)
事務所に戻っためぐは、パソコンを操作してイベントの詳細を確認する。
弦が言った通りのランタンの飛ばし方が詳しく掲載されていた。
(ゲストのランタン以外にも、パーク側が用意したランタンも浮かばせるのね。閉園後もホテルの宿泊者が楽しめるように夜通し浮かべて、翌朝に回収か、なるほど。ん?フェスティバル初日って、8月10日なんだ。氷室くんの誕生日じゃない)
その時デスクの上の内線電話が鳴った。
めぐは受話器を上げて点滅しているボタンを押す。
「はい、広報課の雪村です」
『お疲れ様です、ホテル支配人の長谷部です』
「長谷部さん!お疲れ様です。どうかしましたか?」
『先日撮影したドレスの写真が出来上がったんです。雪村さん、お時間ある時にご確認いただけませんか?結構な量なので、メールで送るより実際に見ていただきたいのですが』
「かしこまりました。えっと、今からでもよろしいでしょうか?」
『大丈夫です。お待ちしております』
めぐは弦と環奈、課長に声をかけてからホテルに向かった。
「雪村さん、ご足労いただきありがとうございます」
「こちらこそ」
フロントに行くと、長谷部がいつものようににこやかに出迎えてくれる。
「今日はバックオフィスでお話ししてもよろしいですか?」
「はい、もちろん」
二人でフロントの後ろ側に回り、オフィスの中でテーブルを挟んで座った。
「早速ですが、こちらが先日の写真です。どれもとてもよく撮れていて、スタッフ一同感激しました」
そう言って長谷部がテーブルの上に並べた写真を、めぐは一枚ずつ眺めた。
「なんだか自分ではない気がします。ヘアメイクさんもカメラマンさんも、さすがプロですね」
「いえいえ、雪村さんのモデルが良かったからだと言ってましたよ。我々はぜひとも全部使わせていただきたいのですが、ご了承いただけますか?」
聞かれてめぐは考え込む。
自分としては気が引けるが、こうやってプロのスタッフが仕事をしてくれた以上、簡単に反故には出来ない。
ここは自分の気恥ずかしさは堪えるべきだろう。
「分かりました、皆様の判断に委ねます。使えるようでしたら使ってください」
「本当ですか?」
途端に長谷部は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!ご協力に心から感謝いたします」
「いえ、そんな。お役に立てるなら良かったです」
「カタログが出来上がったらお渡しします。楽しみにしていてください。あ、今コーヒーを淹れますね。ホテルのオリジナルブレンドなんですよ。あとシフォンケーキもどうぞ」
長谷部は備え付けの小さな冷蔵庫から取り出したケーキを綺麗な柄のプレートに載せ、コーヒーと一緒にテーブルに置く。
「賞味期限が今日までのケーキで、店頭には置けないんです。どうぞ召し上がってください」
「ありがとうございます、いただきます」
ふわっとした口当たりのシフォンケーキは上品な味わいで、ブレンドコーヒーともよく合った。
「とっても美味しいです」
「それは良かった。この季節は雨で客足が遠のいて、ケーキも売れ残りが多いんです。廃棄するのはもったいないので私がいくつか買い取ってるんですが、今度雪村さんの広報課にも差し入れしますね」
「えっ、そんな。どうぞお気遣いなく」
「これくらいさせてください。雪村さんにはとてもお世話になったので」
屈託のない笑顔を浮かべてから、長谷部もコーヒーをひと口飲む。
めぐはふと、ランタンフェスティバルの初日が弦の誕生日であることを思い出した。
事務所に戻っためぐは、パソコンを操作してイベントの詳細を確認する。
弦が言った通りのランタンの飛ばし方が詳しく掲載されていた。
(ゲストのランタン以外にも、パーク側が用意したランタンも浮かばせるのね。閉園後もホテルの宿泊者が楽しめるように夜通し浮かべて、翌朝に回収か、なるほど。ん?フェスティバル初日って、8月10日なんだ。氷室くんの誕生日じゃない)
その時デスクの上の内線電話が鳴った。
めぐは受話器を上げて点滅しているボタンを押す。
「はい、広報課の雪村です」
『お疲れ様です、ホテル支配人の長谷部です』
「長谷部さん!お疲れ様です。どうかしましたか?」
『先日撮影したドレスの写真が出来上がったんです。雪村さん、お時間ある時にご確認いただけませんか?結構な量なので、メールで送るより実際に見ていただきたいのですが』
「かしこまりました。えっと、今からでもよろしいでしょうか?」
『大丈夫です。お待ちしております』
めぐは弦と環奈、課長に声をかけてからホテルに向かった。
「雪村さん、ご足労いただきありがとうございます」
「こちらこそ」
フロントに行くと、長谷部がいつものようににこやかに出迎えてくれる。
「今日はバックオフィスでお話ししてもよろしいですか?」
「はい、もちろん」
二人でフロントの後ろ側に回り、オフィスの中でテーブルを挟んで座った。
「早速ですが、こちらが先日の写真です。どれもとてもよく撮れていて、スタッフ一同感激しました」
そう言って長谷部がテーブルの上に並べた写真を、めぐは一枚ずつ眺めた。
「なんだか自分ではない気がします。ヘアメイクさんもカメラマンさんも、さすがプロですね」
「いえいえ、雪村さんのモデルが良かったからだと言ってましたよ。我々はぜひとも全部使わせていただきたいのですが、ご了承いただけますか?」
聞かれてめぐは考え込む。
自分としては気が引けるが、こうやってプロのスタッフが仕事をしてくれた以上、簡単に反故には出来ない。
ここは自分の気恥ずかしさは堪えるべきだろう。
「分かりました、皆様の判断に委ねます。使えるようでしたら使ってください」
「本当ですか?」
途端に長谷部は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!ご協力に心から感謝いたします」
「いえ、そんな。お役に立てるなら良かったです」
「カタログが出来上がったらお渡しします。楽しみにしていてください。あ、今コーヒーを淹れますね。ホテルのオリジナルブレンドなんですよ。あとシフォンケーキもどうぞ」
長谷部は備え付けの小さな冷蔵庫から取り出したケーキを綺麗な柄のプレートに載せ、コーヒーと一緒にテーブルに置く。
「賞味期限が今日までのケーキで、店頭には置けないんです。どうぞ召し上がってください」
「ありがとうございます、いただきます」
ふわっとした口当たりのシフォンケーキは上品な味わいで、ブレンドコーヒーともよく合った。
「とっても美味しいです」
「それは良かった。この季節は雨で客足が遠のいて、ケーキも売れ残りが多いんです。廃棄するのはもったいないので私がいくつか買い取ってるんですが、今度雪村さんの広報課にも差し入れしますね」
「えっ、そんな。どうぞお気遣いなく」
「これくらいさせてください。雪村さんにはとてもお世話になったので」
屈託のない笑顔を浮かべてから、長谷部もコーヒーをひと口飲む。
めぐはふと、ランタンフェスティバルの初日が弦の誕生日であることを思い出した。



