「あー、マジで痛かった」

顔をしかめる弦の隣で、めぐはピクリとも動けない。
ゴンドラが完全に止まっても呆然としたままだった。

「めぐ?ほら、降りるぞ」

弦に身体を支えられ、めぐはなんとかゴンドラから降りた。
アトラクションの出口で待ち構えていたテレビクルーの前に並び、アナウンサーと一緒に最後のセリフで締める。

「まさにカナダの風景を存分に堪能出来るアトラクションでした。ナイアガラの滝、すごい迫力でしたね!」

アナウンサーに話を振られても、めぐは笑顔を浮かべるだけで何も考えられない。
見かねた弦が口を開いた。

「カナダの壮大な自然を味わい、ラストはスリルと興奮を体感出来るアトラクションです。『ウォーターフォール』を皆様もぜひお楽しみください。お待ちしております」
「私も何度でも乗りたくなりました。新アトラクション『ウォーターフォール』は本日オープンです。皆様、どうぞ『グレイスフル ワールド』にお越しください。雪村さん、氷室さん、本日はありがとうございました」

ありがとうございました、とめぐはかろうじて頭を下げる。

「カット!はい、OKです」

その声を聞き終わると、めぐの意識はスーッと遠のいた。