「雪村さん、お疲れ様でした」

全ての撮影を終えて、長谷部はめぐに労いの言葉をかける。

「本当にありがとうございました。おかげで良いカタログに仕上がりそうです。ドレスの魅力もグッと増して、ブライダルスタッフも、これなら自信を持っておすすめ出来ると喜んでました」
「お役に立てたなら良かったです。でも長谷部さん、写真の仕上がりを確認してから、採用するかどうかを決めてくださいね」
「ああ、そういうお話でしたね。だけどどう考えても採用は決定だと思いますよ。みんなその前提で話していますから」
「そんな……。とにかく私にも確認させていただけたらと思います」
「分かりました、後日ご連絡しますね」

お願いしますと念を押してから、めぐは控え室に戻る。
ヘアメイク担当者が、めぐが着けていたゴージャスなネックレスを外してケースにしまい、長谷部に手渡した。

「確かに返却いたしました」
「確かにお預かりしました」

改まったやり取りに、めぐはそのネックレスがよほど高価なものなのだろうと察する。

(ずっしり重くて輝きも半端なかったもんね。あれって全部ダイヤモンドだったのかも?)

そう思いながら長谷部が手にしているケースを見つめていると、めぐの視線に気づいた長谷部が笑いかけてきた。

「このネックレス、本当に雪村さんにお似合いでしたね。雪村さんにこそふさわしいネックレスだと感じました」

ヘアメイクの女性も、めぐの髪からティアラを外しながら頷く。

「私もそう思います。ここまでゴージャスなアクセサリーは存在感がありすぎて、着けるのを躊躇してしまう方も多いのですけど、雪村さんにはそれに負けない華やかさとオーラがありましたから」

いえ、そんな、とめぐは首を振る。
そしてドレッサーの上に置いておいたポーチから、ブルースターのネックレスを取り出して着けた。
そっと手で触れるめぐに、ヘアメイクの女性が怪訝そうに口を開く。

「雪村さんのイメージとはちょっと違うネックレスですね。雪村さんにはやっぱりダイヤモンドがお似合いですよ」
「いえ、私はこのネックレスが大好きなんです。私らしくいられるし、元気をもらえるので」

めぐはそう言って微笑むと、早くドレスを着替えようとフィッティングルームに向かった。