「おお、実際に目の前にすると迫力ありますね」

垣内は「ウォーターフォール」の滝を見上げてから、カシャカシャと写真を撮る。
乗り場からは見えないが、ぐるりと後ろに回り込むとラストの滝が高くそびえ立っていた。
ザーッという滝の音と風に乗って飛んでくる水しぶきに、垣内はわくわくした様子だった。

その時、ゲストを乗せたゴンドラが滝の頂点に現れた。

「おっ!来ましたね」

垣内がカメラを構える。
周りのゲストも指を差して見上げた。

「キャー!!」

悲鳴が上がり、ゴンドラが一気に降下してきた。
見ていためぐはくらっとめまいがして、思わず後ずさる。

「めぐ?大丈夫か?」

弦がすかさず手を伸ばし、めぐの身体を支えた。

「うん、大丈夫。ごめんね、なんか思い出しちゃって」
「無理するな。垣内さんは俺が案内するから、ちょっと座って休んでろ」

そう言ってすぐ横のバックヤードに繋がるドアを開けると、休憩室のパイプ椅子にめぐを座らせる。

「垣内さんと一緒に『ウォーターフォール』乗って来る。終わったら電話するから」
「分かった。ありがとう、氷室くん」

弦は小さく頷くと、ドアを開けて出て行った。

「ふう」

めぐは椅子の背にもたれて息をつく。
ふと胸元のネックレスが目に入った。

(やっぱり可愛い、このブルースター。見る度に嬉しくなる)

手で触れながら、ふふっと笑みをもらす。

(信じ合う心、か。その通りだな。氷室くんは誰よりも信頼出来るし、氷室くんのおかげで私は楽しく仕事させてもらってる)

環奈の『さすがは氷室さん、雪村さんのことよく分かってます』という言葉を思い出した。

(確かにそうよね。私はブランド物には興味がないし、このネックレスは本当に気に入ってる。でもなあ、私に彼氏が出来たら返さなきゃいけないなんて)

まだ着け始めたばかりだが、このネックレスを着けているとなんだか気持ちが落ち着く。
ずっとずっと着けていたい。
いつの間にか宝物のようにめぐは感じていた。