「めぐは、出逢った頃からいつも明るくて優しくて、俺にとって誰よりも心許せる存在だった。だけど恋人同盟を結んでからは、めぐの恋人のフリをしなければと、そればかり意識していたように思う。本当はどうしようもなくめぐに惹かれていたのに、自分の気持ちから目を背けていた。めぐが恋愛出来るようにと恋人同盟を解消した時、初めて自分の気持ちを思い知ったんだ。これほどまでにめぐのことを好きだったのかって。そして後悔した。どうしてめぐの手を離してしまったのかって。だからもう二度とめぐを手放したりしない。これからはどんな時もそばにいて、めぐをこの手で守っていく。めぐ、どうか俺と結婚してほしい」
「弦くん……」

めぐの目に涙が込み上げてきた。

「私、すごく寂しかったの、恋人同盟を解消した時。弦くんとの日々が楽しくて幸せだったから、もう二度と望んではいけないんだって思うと心が痛くて悲しかった。でもまだそれを弦くんを好きな気持ちとは気づけなくて、色んな事をたくさん迷いながら考えたの。そしてようやく答えを見つけた。私は弦くんのことが誰よりも大好きです」
「めぐ……」
「もう二度とあんな辛い思いはしたくない。何があっても私は弦くんのそばにいます。これから先も、ずっとずっと。弦くん、どうか私と結婚してください」

弦はクッと切なさを堪え、右手を伸ばしてめぐを抱きしめる。

「ありがとう、めぐ。必ず幸せにする」
「うん、私も。ありがとう、弦くん」

耳元でささやき合うと、弦は身体を起こして左手に抱えていたバラをめぐに差し出した。

「俺の気持ちを、このバラに込めて」
「綺麗……。これって108本?」
「そう。永遠(とわ)にめぐを愛すると誓うよ」
「ありがとう」

両手で受け取っためぐは、微笑みながらバラに顔を寄せる。
すると弦はそっとめぐの左手を取った。
え?と顔を上げためぐは、またしても驚いて目を見張る。
左手の薬指に、キラキラと輝く指輪がはめられていた。

「弦くん、これって……」
「めぐを想って選んだ婚約指輪。俺のめぐへの愛情が詰まってる」
「ありがとう、こんな素敵な指輪……」

めぐはまだ信じられない気持ちで指輪を目の前に掲げた。
中央にはまばゆいばかりに輝くダイヤモンド。
そしてその両サイドに添えられたアイスブルーダイヤモンドは、よく見ると可憐な5枚の花びらのようだった。

「もしかしてこれ、ブルースター?」
「そう。ブルースターの花言葉は『信じ合う心』ともう一つ『幸福な愛』。どちらも俺とめぐにとって大切な言葉だ」
「信じ合う心と幸福な愛……」

呟いてから、めぐは目に涙をいっぱい溜めて弦に抱きついた。

「うん、そうだね。ずっと大切にするね。指輪も、その言葉も」
「ああ」

弦はめぐの頬に流れる涙をそっと拭うと、手を添えて優しく口づける。
パークの煌めく夜景が二人を包み、この上なく幸せな瞬間を彩っていた。