「えっ、ここってスイートルームじゃない?」

部屋の前まで来ると、めぐは以前写真撮影したことを思い出し、驚いて弦を見上げた。

「そうだけど、嫌だった?」
「ま、まさかそんな!でも私の誕生日ってだけなのにスイートルームなんて……」
「めぐの誕生日だからこそ、スイートルームで祝いたかったんだ。ほら、どうぞ入って」
「はい、失礼します……」

身を縮こめながら足を踏み入れためぐは、テーブルの上のシャンパンや料理に驚いて目を見開いた。

「すごいごちそう。これも弦くんが頼んでくれたの?」
「そう。長谷部さんが絶妙なタイミングで用意しておいてくれたから、まだ温かいな。早速食べようか」
「うん!」

広いダイニングテーブルに向かい合って座り、シャンパンで乾杯する。

「めぐ、誕生日おめでとう」
「ありがとう!こんなに色々準備してくれてとっても嬉しい。何より、弦くんと過ごせるのが一番幸せ」
「俺もだ。初めて恋人としてめぐの誕生日を祝える」
「そっか、そうだね。私の人生で初めて。恋人と過ごす誕生日が」
「これからは毎年一緒に過ごそう、めぐの誕生日を」
「うん。弦くんの誕生日もね」

微笑み合って美味しい料理を味わう。
食後の紅茶を飲もうとソファに移動すると、弦が冷蔵庫からケーキを取り出した。
生クリームとイチゴのホールケーキの上には「Happy Birthday!めぐ」と書かれたチョコプレートが載っている。

「わあ、可愛いケーキ」
「めぐ、ロウソク吹き消して」
「うん。これからもずっと弦くんと一緒にいられますように……」

手を組んで願い事をしてから、めぐはロウソクを吹き消した。

「おめでとう、めぐ」
「ありがとう」

幸せそうにケーキを頬張るめぐを、弦は優しい眼差しで見つめていた。