「弦くん!」

めぐの声がして弦は振り返る。
ふわりとスカートを揺らしながら、めぐが軽やかに階段を下りてくるのが見えた。
淡いパープルのワンピースと、胸元にはブルースターのネックレス。
何よりめぐの笑顔が輝いている。

「お待たせ」
「いや。行こうか」
「うん」

腕を組んで歩き出すと、弦は改めてめぐの横顔を見つめた。

「めぐ、すごく綺麗だ」
「ありがとう。環奈ちゃんにキラキラのパウダーしてもらったの」
「そっか。もう充分キラキラしてるけどな」
「え、そんなに?自分ではあんまり見えないんだけど」

うつむいて胸元を確認しているめぐが可愛らしい。
だが弦は、このあとのことを考えて気持ちを引き締めた。

「めぐ、ホテルの部屋で夕食にしてもいい?」
「ホテルの?もしかしてお部屋を予約してくれたの?」
「ああ。夜のショーもよく見える部屋をね」
「そうなんだ。ありがとう!楽しみ」

嬉しそうなめぐに、弦も思わず頬を緩める。
ホテルのエントランスを入るとめぐをソファに座らせて、一人でフロントに向かった。

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました、氷室さん」
「こんばんは、長谷部さん」
「お部屋のキーはこちらです。お花は右側のベッドルームのクローゼットに置いてありますので」
「ありがとうございます」
「お二人にとって素敵な夜になりますように」

長谷部の言葉を噛みしめ、弦は力強く頷いた。