5月16日、めぐの誕生日を迎えた。

「雪村さん、ハッピーバースデー!」

朝めぐが事務所に着くと、環奈が早速プレゼントを差し出す。

「ありがとう、環奈ちゃん。なんだろう、見てもいい?」
「はい。爽やか系の香水とお肌がキラキラでツヤツヤになるパウダーなんです」
「そんなのあるんだ。どうやって使うの?」
「ふふっ。じゃあ定時過ぎたら更衣室でパタパタしましょ」
「うん、ありがとう」

しばらくすると弦も出社してくる。

「おはようございます」
「あ、氷室さん!おはようございます」

環奈に続いてめぐも「おはよう」と挨拶する。

「おはよう」

いつものようにそう言ったあと、弦は椅子に座りながらさり気なくめぐの耳元でささやいた。

「誕生日おめでとう、めぐ」
「ありがとう」

小さく答えて微笑み合うと、環奈が「ふふっ、いいなー」と頬杖をついて笑う。

いつも通り仕事をこなし、定時になると環奈が立ち上がって声をかけた。

「雪村さん、更衣室行きましょ!」
「あ、うん。ちょっと待ってくれる?環奈ちゃん」

そう言うとめぐは、弦にこっそり尋ねる。

「あのね、別の服に着替えてもいい?」

弦は驚いたようにめぐを見てから、ふっと笑みを浮かべた。

「もちろん」
「じゃああとで、従業員用のパークの入り口に行くね」
「分かった」

弦ににこっと笑いかけてから、めぐは環奈と更衣室に向かった。