「ありがとうございました。以上でセレモニーは終了です」

ステージを下りて裏手に回ると、衣笠がめぐと弦に挨拶した。

「これはお二人への記念品です。はい、フェアリーちゃん渡してね」

衣笠から紙袋を受け取ったフェアリーちゃんは、迷うことなく弦に歩み寄る。

「ありがとう、フェアリーちゃん」

弦がにっこり受け取ると、フェアリーちゃんは弦の腕を取ってムギュッと抱きついた。

「あー!フェアリーちゃん?私へのお土産はないのかしら?」

めぐがすかさず二人の間に割って入ると、フェアリーちゃんは「ほい」とばかりにめぐに紙袋を差し出す。

「ありがとう!」

弦の前に立ちはだかってお礼を言うめぐに、やれやれと弦は肩をすくめた。

その後、社長達とランチを食べながら和やかに意見交換をし、無事に視察は終わる。
めぐと弦は一度ホテルに戻って着替えてから、パークの出口で衣笠と最後の挨拶をした。

「衣笠さん、色々とお世話になりました」
「こちらこそ。お二人とも今回は本当にありがとうございました」
「衣笠さんもぜひグレイスフル ワールドにお越しください。今度は私達がおもてなししますので」
「はい、いつかきっと伺います」
「楽しみにしていますね」

笑顔で手を振ってパークをあとにする。
ようやく仕事が終わり、めぐはホッと肩の力を抜くと、弦の手をギュッと握った。

「ん?どした、めぐ」
「だってフェアリーちゃんがべったりくっついてたんだもん」
「へ?フェアリーちゃんにヤキモチ焼いてんの?」
「当たり前だよ。私の彼氏なのに」
「お子ちゃまだな、どっちも」

するとめぐはうつむいて立ち止まる。

「めぐ?」
 
弦も立ち止まってめぐの顔を覗き込んだ。

「子ども扱いしないで。私だって今に大人の恋愛出来るようになってみせるからね!」

そう言ってキッと弦を見上げると、背伸びをして弦の頬にキスをする。

「ほら、行くわよ」

再び歩き始めためぐに手を引かれて、弦はひとりごちる。

「なんか、違うんだけど……。翻弄されてる?俺」
「ん?何か言った?」
「いえ、何も」

真顔に戻り、弦はおとなしくめぐについて行った。