「おはようございます、雪村さん、氷室さん。よくお休みになれましたか?」

翌朝、10時に部屋にやって来た衣笠にめぐはにっこり微笑む。

「はい、ぐっすり。衣笠さん、とても豪華なお部屋をありがとうございました」
「いいえ、喜んでいただけて良かったです。ではこのあとの歓迎セレモニーについてお話しさせていただきますね」

ソファに座って衣笠の説明を受けると、めぐと弦はグレイスフル ワールドの制服に着替えた。
めぐの胸元にはいつものブルースターのネックレスが輝いている。

「わあ、お二人ともとっても素敵!美男美女に磨きがかかって、もう本当に芸能人にしか思えません」

感激した面持ちの衣笠に苦笑いして、めぐと弦は出かける支度を整えた。

「それではパークのイベントスペースにご案内しますね。そこで弊社の社長から記念品の贈呈がありまして、マスコミがその様子を撮影します。そのあとフェアリーちゃんと私も並んでフォトセッションとなります」
「はい!フェアリーちゃん、楽しみです」

わくわくしながら衣笠に続いてパークを歩いて行く。
小人の街がテーマのエリアを抜けると、昨日舞踏会のショーを観たステージが見えてきた。

「あちらです。もうマスコミが来てますので、先に裏手に回って社長からご挨拶させていただきますね」
「はい」

さすがのめぐも、緊張感が高まって来た。
ステージの裏に行くと、スーツを着た年配の男性が何人か立ち話をしている。

「社長、雪村さんと氷室さんをお連れしました」

衣笠が声をかけると、一斉に振り返る。

「おお、これはこれは。遠いところをようこそお越しくださいました。フェアリーランド運営会社の社長をしております、野村(のむら)です」
「初めまして、グレイスフル ワールド広報課の雪村と氷室と申します。本日はお招きいただきまして誠にありがとうございます。お目にかかれて大変光栄です」

めぐと弦は社長に挨拶して名刺を交換した。

「いやー、お二人ともこんなにもイケメンと美女で、やはり格が違いますな。グレイスフル ワールドが高級感と本物志向を売りにしているのがよく分かります」
「いえ、そんな。こちらのフェアリーランドもメルヘンやファンタジーの可愛らしい雰囲気で、とても素敵ですね」
「まあ、お互いそれぞれに良さがありますよね。今後はもっとアイデアを交換し合える関係を築いていきたいと思っておりますので、末永くよろしく」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」

時間になると、衣笠が進行役としてステージに上がりマイクを握った。
社長が登壇して挨拶すると、いよいよめぐと弦も招かれてステージに上がる。
友好の証の楯を受け取り、マスコミのカメラに笑顔を向ける。
最後にフェアリーちゃんも登場して、記念撮影となった。

が、弦の隣に並んだフェアリーちゃんはやたら弦にぴたりと寄り添い、うふふと言わんばかりのポーズで愛想を振りまく。

(ちょっと、近過ぎない?)

めぐはカメラに向かって微笑みつつ、横目でフェアリーちゃんの動きをうかがっていた。