「めぐ、急げ!あと3分!」
「待ってー!」

年中無休のテーマパークは年末年始も関係ない。
大みそかの今日も、弦とめぐは取材の対応に追われていた。
広報の制服を着て、テレビクルーとの待ち合わせ場所に走る。

「やった、セーフ!」
「まったくもう、いっつもこれだな。めぐ、前髪」

いつものように弦がめぐの前髪を整える。
顔を上げてされるがままになっていためぐは、じっと弦を見つめた。

「ん、いつものめぐ」

手を下ろした弦がふとめぐの視線に気づく。
上目遣いに見上げてくるめぐが可愛くて、ふっと笑みをもらした。

「めぐさん、可愛すぎるんですけど?」

そう言うとさり気なく抱き寄せてキスをする。
ひゃっ!とめぐは驚いて後ずさった。

「ひ、氷室くん?仕事中になんてことを……」
「ん?これがほんとの仕事チュウ」
「何を言ってるのよ?」
「あ、ほら。いらっしゃいましたよ御一行様が」

テレビクルーの姿が見えて、めぐは姿勢を正して笑顔を浮かべる。

「いらっしゃいませ。グレイスフル ワールドへようこそ。広報課の雪村と申します」
「同じく氷室と申します。本日はよろしくお願いいたします」

いつもの息の合ったやり取りで、二人はテレビクルーをパークへと案内した。