「おはようございます、チェックアウトをお願いします」
翌朝。
ルームサービスで朝食を食べ終えると、弦とめぐは一緒にロビーに下りた。
フロントはチェックアウトのゲストが列を作り、スタッフはてきぱきと手続きを済ませていく。
順番が来てルームキーを差し出した相手は女性スタッフで、長谷部は別のゲストの対応をしていた。
無事に手続きを済ませて弦とめぐはフロントを離れる。
その時「雪村さん」と長谷部の声がした。
振り返ると、夕べめぐが返したバラの花束を手に長谷部が近づいて来る。
「雪村さん。よかったらこのバラ、事務所に飾ってやってくれませんか?バラに罪はありませんので」
そう言って綺麗にラッピングされた花束を差し出した。
「あ、はい。では、そうさせていただきます。ありがとうございます」
「こちらこそ。ホテルをご利用いただき、誠にありがとうございました。またの機会をお待ちしております」
弦とめぐにお辞儀をしてから、長谷部はにこやかに笑ってまたフロントに戻って行った。
ホテルを出ると事務所に出社して、めぐは一人給湯室に向かう。
棚から花瓶を取り出すと、水を入れてバラを生けた。
が、ふと気づいて花を整えていた手を止める。
(あれ?バラの本数が、増えてる?)
数えてみると8本あった。
(8本のバラって?)
もしや意味があるのかと、めぐはスマートフォンを取り出して検索してみた。
画面に表示された言葉に、思わず息を呑む、
8本の赤いバラに込められた想いは……
『優しさをありがとう』
めぐの胸がキュッと締めつけられた。
(長谷部さん……)
じわりと目に涙が込み上げる。
辛い時に寄り添ってくれた長谷部の温かさが思い出された。
(優しいのは長谷部さんなのに)
気持ちに応えられなかったことが心苦しくなる。
だが素直に受け取ろう。
あの人の優しさを。
そしてずっと感謝の気持ちを忘れずにいよう。
めぐはそう強く心に刻んだ。
翌朝。
ルームサービスで朝食を食べ終えると、弦とめぐは一緒にロビーに下りた。
フロントはチェックアウトのゲストが列を作り、スタッフはてきぱきと手続きを済ませていく。
順番が来てルームキーを差し出した相手は女性スタッフで、長谷部は別のゲストの対応をしていた。
無事に手続きを済ませて弦とめぐはフロントを離れる。
その時「雪村さん」と長谷部の声がした。
振り返ると、夕べめぐが返したバラの花束を手に長谷部が近づいて来る。
「雪村さん。よかったらこのバラ、事務所に飾ってやってくれませんか?バラに罪はありませんので」
そう言って綺麗にラッピングされた花束を差し出した。
「あ、はい。では、そうさせていただきます。ありがとうございます」
「こちらこそ。ホテルをご利用いただき、誠にありがとうございました。またの機会をお待ちしております」
弦とめぐにお辞儀をしてから、長谷部はにこやかに笑ってまたフロントに戻って行った。
ホテルを出ると事務所に出社して、めぐは一人給湯室に向かう。
棚から花瓶を取り出すと、水を入れてバラを生けた。
が、ふと気づいて花を整えていた手を止める。
(あれ?バラの本数が、増えてる?)
数えてみると8本あった。
(8本のバラって?)
もしや意味があるのかと、めぐはスマートフォンを取り出して検索してみた。
画面に表示された言葉に、思わず息を呑む、
8本の赤いバラに込められた想いは……
『優しさをありがとう』
めぐの胸がキュッと締めつけられた。
(長谷部さん……)
じわりと目に涙が込み上げる。
辛い時に寄り添ってくれた長谷部の温かさが思い出された。
(優しいのは長谷部さんなのに)
気持ちに応えられなかったことが心苦しくなる。
だが素直に受け取ろう。
あの人の優しさを。
そしてずっと感謝の気持ちを忘れずにいよう。
めぐはそう強く心に刻んだ。



