フロントでルームキーをもらい、めぐは昨日と同じ客室に入る。
テーブルの上には綺麗な赤いバラが7本飾られたままだった。
めぐはバルコニーに出ると三脚を立て、ビデオカメラをセットする。
準備が整うと真下を見下ろした。

キャナルガーデンの鑑賞エリアは、弦の誘導でゲストが続々と列を作っている。

(大丈夫かな、お手伝いに行った方がいいかな)

めぐがそわそわと下の様子を気にかけていると、ふいに弦が顔を上げた。

(えっ……?)

気のせいかとも思ったが、どうやら弦と視線が合っている。
弦は口元を緩めると、めぐに親指を立ててみせた。

(氷室くん、大丈夫そう。私も撮影がんばらなきゃ)

めぐも笑みを浮かべて頷いた。
やがて2回目のショーが始まった。
予定していなかった21時のショー。
それが急遽こうして開催されたことに、めぐは胸が熱くなる。

(色んな人のおかげで実現することが出来た。残業してくれた社員、ショーのスタッフ、部長を説得してくれた課長、それから、氷室くん)

カメラの映り具合を確かめながら、めぐは感慨深くショーを眺めた。
クリスマスの夜を彩る鮮やかな花火とゲストの笑顔。
めぐは幸せを噛みしめながら、その輝きを目に焼き付けた。