「うわー、綺麗!」

一斉にゲストの歓声が上がる。
噴水が作り出すウォーターカーテンに、レーザーで映し出される色鮮やかな映像。
背景のヨーロピアンスタイルの建物に投影されるプロジェクションマッピング。
雪が降る夜空を駆け回るトナカイとサンタクロースが、観る人を美しい世界へといざなう。
まるで空を飛んでいるかのような臨場感溢れる映像に、ゲストはうっとりと酔いしれる。
世界中の街にプレゼントが届けられ、温かい笑顔が広がるクリスマス。
最後に花火が夜空をキラキラと輝かせ、ゲストから感嘆のため息がもれた。
一瞬辺りが明るくなるほどの壮大なフィナーレのあと、一斉に拍手が起こる。

「はあ、素敵だった!」
「ねー!もううっとり」

興奮冷めやらぬ様子で、ゲストは動き出す。
めぐは長谷部と目配せして誘導を始めた。
だが、インカムから弦の声が飛んでくる。

『全スタッフへ。鑑賞エリア前列からゆっくり誘導を始めます。それ以外のゲストはしばらくその場で待ってもらってください。一斉に動くと危険です』

めぐはすぐさま長谷部に伝え、ゲストにしばらくその場で待機してもらう。
窓からキャナルガーデンを見下ろすと、弦が最前列でゲストを誘導しているのが見えた。

(混乱もないみたい。良かった)

鑑賞エリアの最後の列が動き出すのを見て、めぐはインカムのスイッチを押す。

『氷室くんへ、ホテル2階の雪村です。これよりゲストの誘導を始めます』
『了解、エントランスにヘルプに行きます』

めぐが長谷部に頷いて合図をし、ゲストの誘導を開始する。
ゆっくりと階段を下りると、エントランスで待ち受けていた弦が外へと誘導していた。
最後のゲストを見送り、めぐはふうと肩の力を抜く。

『全スタッフへ。なにかトラブルなどあれば報告してください』

弦の問いにインカムからは、『特にありません』『大丈夫です』と返事がある。

「なんとか終わったな。って、もう次の回のゲストが来てる」
「ほんとだ」
「めぐ、ここはいいから客室から撮影頼む」
「でも……」
「それも大事な仕事だ。頼むぞ」

めぐの頭にポンと手を置いてから、弦はタタッと外に出て行った。