「はっ!?2回公演?いやいや、そんな突拍子もない話を当日にされてもねえ……」

話を切り出すと、案の定企画課の課長に鼻であしらわれた。

「そりゃ、昨日は君達に助けられたよ。今夜もこの資料の通りにスタッフを配置して誘導する。だけど、それと2回公演は別の話だ。不可能だよ」
「なぜ不可能なのですか?どういった理由でしょうか?」

めぐは引き下がらない。

「そんなの、考えたら分かるでしょ?とにかく時間がないよ。こういうのは、定例会議で部長と課長が顔を揃えた場で提案してだね……」
「今回は課長から部長にお伝えください。お願いします。ゲストを一人でも多く楽しませたいんです」
「気持ちは分かるけど、なんかあったら責められるのは私だよ?このまま予定通りにした方が、君達だって安泰じゃないか」

すると弦が一歩詰め寄った。

「課長、問題点を端的に挙げてください。もし部長のお咎めが怖いなら、私達が自己判断でやったことにします。花火やショーの技術スタッフにも、これから自分達で頭を下げに行きます。他には?」

弦の真剣な表情に気圧されて課長は怯む。

「えっと、他には……、そう!現場の誘導スタッフは?みんな20時半までの拘束なんだよ?2回公演なら1時間残業を強いることになる。当日、しかもクリスマスに残業を命じたら、それこそパワハラだって訴えられ兼ねない」
「分かりました。その点も私がなんとかします。それがクリアになれば実施可能ですよね?」
「う、うん。そりゃ、まあ……。だけど急な残業を快く引き受けてくれるなんて、せいぜい5、6人じゃないかい?それだと話にならんよ。ゲストの安全は確保されない」
「承知しております。では後ほどご報告に参りますので」

課長にお辞儀をすると、「行くぞ、めぐ」と声をかけて弦は足早に事務所に戻った。