「雪村さんって、お顔のパーツが完璧ですよね。美人の条件を全て満たしてます」

いつものように仕事をしていると、向かいの席から環奈がしみじみと話し出した。
めぐは、雑誌の出版社から送られてきた質問シートに回答を入力する手を止めて顔を上げる。

「なあに?急にどうしたの、環奈ちゃん」
「うつむき加減の雪村さん、おでこのカーブが美しいんですよ。まつ毛は長いしまぶたはぱっちり二重。目も大きくてキラキラ澄んでるし。Eラインとオージーカーブも理想的。パーツの配置も黄金比ですよ」
「は、え、なんですって?オージービーフの焼肉のタレ?」
「はいー?何を言ってるんですか」
「だって訳が分からなくて」
「もう、いいです!仕事しましょ」
「はあ……」
 
釈然としないまま仕事に戻ると、隣の席で弦がククッと笑うのが聞こえた。

「なによ?」
「いや、別に。焼肉食べたいなーと思っただけ」
「バカにしてるでしょ?」
「してないよ。黄金ときたら焼肉のタレだよな?うん、間違ってないぞ」
「やっぱりバカにしてる」
「してないって。あ、じゃあさ、今日焼肉食いに行く?」
「いいの?うん、行く!」

コロッと態度を変えたのがおかしかったのか、弦は笑いをかみ殺して頷く。

「はいよ、じゃあ楽しみにしてる」
「うん!」

にこにこと仕事に戻るめぐに、環奈が身を乗り出してきた。

「なんだかんだ仲いいですよねー、雪村さんと氷室さん。美男美女だし、お似合いです」
「そう見える?それなら良かった」

めぐはその後もご機嫌で仕事をこなした。