少し花音は寂しい気持ちになってしまう。牡鹿先生は教室を見回し、「他に学級委員長をやりたい人はいますか?」と訊ねる。誰も手を挙げない。

「では、このクラスの学級委員長は桃瀬さんにお願いします。桃瀬さん、よろしくお願いしますね」

「は、はい!」

学級委員長に花音が決まったことで、他の委員会決めの司会は牡鹿先生から花音に引き渡された。花音は黒板の前に立ってクラスを見回す。すると、誰かが欠席しているのがわかった。一つの机だけが空いている。

(大切な一日目にお休みって、ちょっと可哀想だな)

そう思いながらも花音はクラスメートたちに訊ねる。

「では、次に副委員長になりたい方はいますか?」

クラスは静まり返っている。誰も手を挙げる気配がない。全員黒板から目を逸らしている。花音が困っていると、牡鹿先生が助け船を出してくれた。

「桃瀬さん。先に他の委員会などを決めましょう」

「は、はい!では、図書委員になりたい方はいますか?」

他の委員会や係を花音が訊ねると、ちらほらと手をクラスメートたちは挙げていく。副委員長以外はそれほど時間がかからずに決まった。