神社の階段に座りながらぼーっとしていると、久しぶりに恭介が現れた。

「……行くのか」
「冗談言わないで。ここが今まで以上に寂れるわ」

 祀る相手が不在になれば、人々の意識にはのぼりにくくなる。神主もいない。祭事の時のみ、兼務している神主が出張してくれるだけだ。

 ただ、すぐに断るのは忍びなくて少し時間をおこうと思っただけ。

「力の強い妖がいれば、少しの間ならそこまでは寂れない」
「……あなたが、ここにいてくれるって?」

 嘘でしょう。帰ってくるかも分からない私を、一人きりで待つの?
 他の……人間の男といる私を。

「ああ、待っていよう」
「そこまで私を愛しているとは知らなかったわ」
「言ったはずだ。お前の帰る場所は俺だ、と」
「…………」

 理解できないわね……本当に私を好きなら見送れないはずで……それに待てないはず。

「意味が分からないわ」
「お前の価値観で俺をはかるな」
「ここで待ってくれるというのなら、本当に三年間いなくなるわよ。いいの?」
「三年でいいのか?」
「ええ、きっかり三年」
「分かった」

 そう言って、また彼は姿を消した。
 次に会うのは――……三年後かもしれない。