『………”無感情症”という病気が、この世にはあります』

 『漢字の通り、感情がない、もしくは動きづらい、といった病気ですね』

 『残念ですが、希少な病気なので、治療は難しいかと…………』



 そう言われた時から、いや、もっと前からかもしれない。

 私の世界は、透明だった。



 みんなが楽しそうでも、私には理解できなくて。

 みんなが悲しそうでも、私はちっとも悲しくなくて。

 そんな自分に、きっと、嫌気が差していたんだろう。



 だから、きっと、心のどこかで、無意識に、探していたんだろう。 

 治るはずもない、この病気を、治してくれる人を。

 私の透明な世界に、彩りを与えてくれる人を。



 そして、君は現れた。



 ————透明な世界に、彩りを。