求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛

そしてあっという間に昼近くなる。
先程メールで、新幹線を降りて最寄りの電車に乗ったと連絡が入る。

『待たせて申し訳ないけど、もう少し待っていて欲しい。』
とメールの終わりに書かれていたから、

『母がお昼ご飯を作って待っていますので一緒に食べましょう。ゆっくり帰って来てください。』
と、返事を送った。


ガチャと、玄関のドアが開く音がする。

私は急いで松葉杖を取り、玄関まで頼りない足取りで進む。

「お帰りなさい。お疲れ様でした。」
と、紫音さんに満面の笑みを向けると、
『ただいま。』と紫音さんが廊下を急いで歩いてきたと思ったら、あっという間にぎゅっと抱きしめられる。

彼の温もりに触れて、言い表せないような安堵の気持ちが広がり、無意識にすりすりとその胸板に自ら擦り寄ってしまうけど、ハッとして、甘えてはいけないんだと自分で自分を律する。

「あまり無理して歩かなくていい。まだまだ、絶対安静なんだから。」
過保護な彼は益々度をあげて心配してくるから、

「あんまりじっとしてても、体が鈍ってしまいますから。」
と、私は大丈夫だと言って聞かす。そんなやりとりを何度かしていると、エプロンで手を拭きながら、リビングのドアから母が顔を覗かせる。

「お帰りなさい。あなたが紫音さんね。始めまして心奈の母です。」
と、エプロンで手を拭きながら、リビングのドアから母が顔を覗かせる。