そして週末、紫音は後ろ髪をひかれながら、地方のリサイタルに出かけて行った。その日の午後には母がやって来て、高層マンションの凄さに驚いたのは言うまでもない。
「急だったのに、来てくれてありがとう。」
「家族なんだから、もっと頼ってくれて良いのよ。心奈はいっつも遠慮して水臭いんだから。」
心奈は久しぶりに母の手料理を食べ、家族の温かさに触れ、紫音のいない寂しさを紛らわす事が出来た。
「それにしても…紫音さんって何者なの?二十代でこんな高層マンションに住めるなんて…。心奈大丈夫なの?気後れしてない?」
就寝前、ジャグジー付きの広いお風呂を満喫した母が、驚きと共に聞いてくる。
「気後れしないって言ったら嘘になるけど…私の病気の事を受け入れて理解してくれて、いつも見守ってくれて…凄く優しい人なの。結構有名なピアニストなんだけど…知ったのはつい最近で…。」
始めて紫音との事を誰かに話す。
言葉にすると、彼の凄さや優しさを改めて実感し、私なんかで本当に良いのかなと戸惑いながらも、やっぱり好きだなぁと思う気持ちも溢れ出す。
「良かったわね、良い人に巡り会えて。幸せそうで安心したわ。
…状況によっては実家に連れて帰ろうかと思ったけど、大丈夫そうね。」
母も幸せそうに話す心奈を見て安心したようだ。
そして就寝の時間になり、心奈の部屋にお布団を敷いて、母と枕を並べて久しぶりに寝た。
そんな日の真夜中に心奈は悪夢を見てうなされる。
梶原から走って逃げて突き当たりまで追い込まれ、逃げ場が無くなり襲われると言う夢…。
母に揺り起こされて、バッと起きた時にはひどい寝汗で、母を心配させる。
しばらくドクドクと心拍もなかなか治らず、呼吸も乱れ体の震えも出てきてしまう。
実は、会社を辞めてから直ぐはそんな夜が何度もあって、夜眠るのが怖くなった日々があった。だから、深夜バイトを始めたのだけど…。
紫音に会ってからずっと落ち着いていたのに…また、振り出しに戻った気分だ。
それから心奈は、空が明るくなるまで眠れず、やっと明け方うつらうつらと眠りに着いた。
「急だったのに、来てくれてありがとう。」
「家族なんだから、もっと頼ってくれて良いのよ。心奈はいっつも遠慮して水臭いんだから。」
心奈は久しぶりに母の手料理を食べ、家族の温かさに触れ、紫音のいない寂しさを紛らわす事が出来た。
「それにしても…紫音さんって何者なの?二十代でこんな高層マンションに住めるなんて…。心奈大丈夫なの?気後れしてない?」
就寝前、ジャグジー付きの広いお風呂を満喫した母が、驚きと共に聞いてくる。
「気後れしないって言ったら嘘になるけど…私の病気の事を受け入れて理解してくれて、いつも見守ってくれて…凄く優しい人なの。結構有名なピアニストなんだけど…知ったのはつい最近で…。」
始めて紫音との事を誰かに話す。
言葉にすると、彼の凄さや優しさを改めて実感し、私なんかで本当に良いのかなと戸惑いながらも、やっぱり好きだなぁと思う気持ちも溢れ出す。
「良かったわね、良い人に巡り会えて。幸せそうで安心したわ。
…状況によっては実家に連れて帰ろうかと思ったけど、大丈夫そうね。」
母も幸せそうに話す心奈を見て安心したようだ。
そして就寝の時間になり、心奈の部屋にお布団を敷いて、母と枕を並べて久しぶりに寝た。
そんな日の真夜中に心奈は悪夢を見てうなされる。
梶原から走って逃げて突き当たりまで追い込まれ、逃げ場が無くなり襲われると言う夢…。
母に揺り起こされて、バッと起きた時にはひどい寝汗で、母を心配させる。
しばらくドクドクと心拍もなかなか治らず、呼吸も乱れ体の震えも出てきてしまう。
実は、会社を辞めてから直ぐはそんな夜が何度もあって、夜眠るのが怖くなった日々があった。だから、深夜バイトを始めたのだけど…。
紫音に会ってからずっと落ち着いていたのに…また、振り出しに戻った気分だ。
それから心奈は、空が明るくなるまで眠れず、やっと明け方うつらうつらと眠りに着いた。