「家族にお願いするか?俺が心配なんだ。」
心奈の地元は新幹線で2時間くらいだ。
会社を辞めた事を伝えていなくて、疎遠になってしまっているようだけど、事件の事は話しておくべきだろうし、俺としてこの機会を借りて同棲も婚約も結婚も全て、認めて貰いたいと思い提案する。
「ずっとメールのやり取りはしてるんですが…会社を辞めた事を話すには…勇気が入ります…。」
「電話をかけてくれたら、後は俺が全て話すよ。第三者の方がこういう時は話しやすいし、お互い冷静になれるはずだから。」
しばし思案する心奈を見つめ、俺も何か他に説得する手はないかと考えこむ。
会計が終わって家路に着くが、やはり松葉杖で歩くのに慣れていない彼女は、どう考えても抱き上げて歩く方が速いと思うほどだった。
「やっぱり1人で残すのは心配だから、俺がリサイタルを…」
「駄目です!それは絶対駄目…。」
言葉を遮るように心奈が慌てて言う。自分の為に紫音にこれ以上迷惑なんてかけられない。
「実家に電話してみます。…母か姉にお願いしてみます。」
「…お姉さんが居たのか?」
そんな事も知らなかったのかと、紫音は人知れず頭を抱える。
「4歳上なんですが、子供がまだ小さくてあまり迷惑はかけられ無いんですけど…。」
それから家に着いて、善は急げと紫音に急かされ、心奈は久しぶりに実家に電話した。
会社を辞めて以来、素っ気ないメールのやり取りだけだった…。
『もしもし?』
数秒で電話に出た母親に、緊張気味に話し出す。
「お母さん…実は、私、会社を半年前に辞めて…申し訳なくて…ずっと本当の事が言えなかったの…。」
今までの後めたさや、申し訳ない気持ちが溢れ出て、涙が込み上げて声が振るえてしまう…
隣で静かに見守っていた紫音が優しく心奈を肩に寄せ、変わって欲しいとスマホを受け取りハンズフリーにして話し出す。
「初めまして。こんな時に恐縮ですが…
心奈さんと結婚前提でお付き合いをさせて頂いております。筧 紫音と申します。実は、同じ高校の出身で…。」
紫音がこれまでの経緯を上手く話してくれる。
「自分が側にいながらお怪我をさせてしまい申し訳けありませんでした。」
と、決して悪く無い紫音が頭を下げるから、
「違うの…紫音さんは助けに来てくれて…」
と、心奈は一生懸命母に話して聞かせた。
『心奈は昔からいつだって心配かけまいと、隠すことがあって…今回も何かあったんじゃないかと、思っていたところなんです。
でも、貴方のようなしっかりした方が、心奈を支えていてくれた事、とても感謝しています。』
紫音にお礼を述べる母の心配そうな声が心奈の涙を誘う。
そう、母はいつだってそういう人だった。
心配させてしまっても大きな心で包んでくれる人…。
『私が週末そちらに伺います。』
そう母が言ってくれたので、紫音もそっと胸を撫で下ろした。
心奈の地元は新幹線で2時間くらいだ。
会社を辞めた事を伝えていなくて、疎遠になってしまっているようだけど、事件の事は話しておくべきだろうし、俺としてこの機会を借りて同棲も婚約も結婚も全て、認めて貰いたいと思い提案する。
「ずっとメールのやり取りはしてるんですが…会社を辞めた事を話すには…勇気が入ります…。」
「電話をかけてくれたら、後は俺が全て話すよ。第三者の方がこういう時は話しやすいし、お互い冷静になれるはずだから。」
しばし思案する心奈を見つめ、俺も何か他に説得する手はないかと考えこむ。
会計が終わって家路に着くが、やはり松葉杖で歩くのに慣れていない彼女は、どう考えても抱き上げて歩く方が速いと思うほどだった。
「やっぱり1人で残すのは心配だから、俺がリサイタルを…」
「駄目です!それは絶対駄目…。」
言葉を遮るように心奈が慌てて言う。自分の為に紫音にこれ以上迷惑なんてかけられない。
「実家に電話してみます。…母か姉にお願いしてみます。」
「…お姉さんが居たのか?」
そんな事も知らなかったのかと、紫音は人知れず頭を抱える。
「4歳上なんですが、子供がまだ小さくてあまり迷惑はかけられ無いんですけど…。」
それから家に着いて、善は急げと紫音に急かされ、心奈は久しぶりに実家に電話した。
会社を辞めて以来、素っ気ないメールのやり取りだけだった…。
『もしもし?』
数秒で電話に出た母親に、緊張気味に話し出す。
「お母さん…実は、私、会社を半年前に辞めて…申し訳なくて…ずっと本当の事が言えなかったの…。」
今までの後めたさや、申し訳ない気持ちが溢れ出て、涙が込み上げて声が振るえてしまう…
隣で静かに見守っていた紫音が優しく心奈を肩に寄せ、変わって欲しいとスマホを受け取りハンズフリーにして話し出す。
「初めまして。こんな時に恐縮ですが…
心奈さんと結婚前提でお付き合いをさせて頂いております。筧 紫音と申します。実は、同じ高校の出身で…。」
紫音がこれまでの経緯を上手く話してくれる。
「自分が側にいながらお怪我をさせてしまい申し訳けありませんでした。」
と、決して悪く無い紫音が頭を下げるから、
「違うの…紫音さんは助けに来てくれて…」
と、心奈は一生懸命母に話して聞かせた。
『心奈は昔からいつだって心配かけまいと、隠すことがあって…今回も何かあったんじゃないかと、思っていたところなんです。
でも、貴方のようなしっかりした方が、心奈を支えていてくれた事、とても感謝しています。』
紫音にお礼を述べる母の心配そうな声が心奈の涙を誘う。
そう、母はいつだってそういう人だった。
心配させてしまっても大きな心で包んでくれる人…。
『私が週末そちらに伺います。』
そう母が言ってくれたので、紫音もそっと胸を撫で下ろした。



