「…水でも飲むか?」
お風呂に、ビールに、紫音さんに…のぼせてしまった私は、しばらく彼の膝を枕に動けなくなる。
その後、大いに反省した紫音さんに世話をされ、なんとか回復する。
それから18時過ぎに食事が届けられ、何人かの女中さんが顔を出すが、本当に誰一人として彼に気付かないから、その度にドヤ顔をする紫音さんが可笑しくて、笑いを堪えるのが大変だった。
そんな風に楽しい夕食が終わると、急に夜の事が気になっていく。
それというのも、夕飯の後片付けを終えた仲居さんが気を利かせて、隣の続き間に布団を2組敷いて行ってしまったから…。
確かに、食事中に『新婚さんですか?』と話しかけられ『そうなんです。』と、紫音さんが適当に話を合わせていたけれど…。
そうでなくても、カップルに見えるであろう二人が、それぞれ違う部屋で寝るのは不自然過ぎるだろう。この部屋には他にもベッドルームがあり、一緒に寝るか寝ないかは自由に選択出来るのだけど…。
少し夜の庭園を散歩しようと紫音さんが私を誘う。断る理由もないから、二つ返事で浴衣の上に羽織物を着て出かける。
ところどころにポツンポツンと置かれた灯籠が、道案内をするかのように続いている。
庭の中央には池があり、小さな太鼓橋がかかっていて、そこに行くと沢山の鯉が泳いでいるのが見えた。
「あっ?今の鯉、人面魚みたいですよ。」
先程、2組の布団を見て意識してしまった私は、いつもより少しテンションを上げて、彼を導く。
「人面魚って何だ?」
普段何でも知っている博識の紫音さんが、そう聞いてくるから、ちょっと得意げになって説明する。
「ほら、あの金色の…頭の模様が人の顔みたいに見えませんか?」
「なるほど…見えなくもないな。餌箱があるからあげてみよう。」
紫音さんもしゃがんで池を覗き込んでいる。普段はどちらかというと受け身な人なのに、楽しそうにしている姿は少年のよう。
お酒を飲んでるせいかな?と思うけれど、私も嬉しくて一緒になって鯉に餌を与えてみる。
「楽しいな。旅行も悪くない。これからは一緒にいろんな場所に行こう。」
そう言って紫音さんが笑う。
「はい、楽しみです。」
私も自然と笑顔になった。
お風呂に、ビールに、紫音さんに…のぼせてしまった私は、しばらく彼の膝を枕に動けなくなる。
その後、大いに反省した紫音さんに世話をされ、なんとか回復する。
それから18時過ぎに食事が届けられ、何人かの女中さんが顔を出すが、本当に誰一人として彼に気付かないから、その度にドヤ顔をする紫音さんが可笑しくて、笑いを堪えるのが大変だった。
そんな風に楽しい夕食が終わると、急に夜の事が気になっていく。
それというのも、夕飯の後片付けを終えた仲居さんが気を利かせて、隣の続き間に布団を2組敷いて行ってしまったから…。
確かに、食事中に『新婚さんですか?』と話しかけられ『そうなんです。』と、紫音さんが適当に話を合わせていたけれど…。
そうでなくても、カップルに見えるであろう二人が、それぞれ違う部屋で寝るのは不自然過ぎるだろう。この部屋には他にもベッドルームがあり、一緒に寝るか寝ないかは自由に選択出来るのだけど…。
少し夜の庭園を散歩しようと紫音さんが私を誘う。断る理由もないから、二つ返事で浴衣の上に羽織物を着て出かける。
ところどころにポツンポツンと置かれた灯籠が、道案内をするかのように続いている。
庭の中央には池があり、小さな太鼓橋がかかっていて、そこに行くと沢山の鯉が泳いでいるのが見えた。
「あっ?今の鯉、人面魚みたいですよ。」
先程、2組の布団を見て意識してしまった私は、いつもより少しテンションを上げて、彼を導く。
「人面魚って何だ?」
普段何でも知っている博識の紫音さんが、そう聞いてくるから、ちょっと得意げになって説明する。
「ほら、あの金色の…頭の模様が人の顔みたいに見えませんか?」
「なるほど…見えなくもないな。餌箱があるからあげてみよう。」
紫音さんもしゃがんで池を覗き込んでいる。普段はどちらかというと受け身な人なのに、楽しそうにしている姿は少年のよう。
お酒を飲んでるせいかな?と思うけれど、私も嬉しくて一緒になって鯉に餌を与えてみる。
「楽しいな。旅行も悪くない。これからは一緒にいろんな場所に行こう。」
そう言って紫音さんが笑う。
「はい、楽しみです。」
私も自然と笑顔になった。



