「大丈夫か…?」
きっと見る見る真っ赤になっていく私の顔を見て驚いたであろう紫音さんが、体調を気にして聞いてくる。
「はい。とっても良い気持ちです。」
私はというと、あの新人歓迎会の日からずっと遠ざかっていたお酒を飲めて、なんだかとってもスッキリした気分になっていた。
「そろそろ冷えて来た、部屋に戻ろう。」
夕焼けもいつしか日が暮れて、一番星が見えてきた。
「はい、お食事楽しみですね。」
たった2口でほろ酔い気分になった私を連れて部屋へと戻るその途中、ロビー近くの掲示板に
『凱旋帰国 孤高のプリンス SION ピアノリサイタル』
と、高々書かれたポスターが一枚貼られているのに気付く。
ポスターにはピアノに向かう彼の横顔…
足を止め、ついじっくりと見入ってしまう。
今まで全く気付かなかったけど、もしかして彼のポスターは今や国内どこにでも貼ってあるのだろうか…?
「孤高のプリンス…。」
何気無しに口に出して言ってみる。
「…マジでこのキャッチコピーは無いと思う…。」
隣からはぁーと深いため息と共にそんな声が聞こえてきた。その顔を見上げると、片手を額に押し当て本当に嫌そうな顔をしている、紫音さん本人がそこに居た。
「…大変、紫音さん。ここにいてはいろんな人にバレてしまいませんか!?」
こんな有名人が、お忍で温泉旅行なんて…しかも孤高のプリンスが、女連れなんて知れたら大変な騒ぎになりかね無い。
ビールでぼぉーっとしていた頭を何とかフル回転させ、その彼の手を引っ張って半ば小走りで走り出す。
「心奈!?」
突然走らされた紫音さんが当惑の声をかけてくるが、それどころでは無い私は、とりあえずエレベーターまではと一気に走る。
久しぶりにこんなに走ったから、はぁはぁと息切れが激しいが、何とか到着したエレベーターに乗り込んでひと息吐く。
「ははっ…久しぶりに走ったんだが…。」
紫音さんはなぜか楽しそうに笑う。
「紫音さん…笑ってる場合では無いですよ。私なんかと、旅行してる事が、世間にバレたら大変です。」
息も絶え絶えにそう言うと、
「大丈夫だ、案外バレ無いものだから。」
平然とそう言ってのける。
「表に出る時、俺はいつも前髪を上げているだろ。普段はこんな風に目元まで前髪を下ろすているから、俺がSIONだと気付く人はそういない。」
ハハハ…と楽しそうに笑って、私の頬をそっと撫ぜてくる。
「それよりも…今は心奈のこの顔の方が気が気じゃ無い。」
どう言う事?そう言われても意味が分からず、私は首を傾げるばかり…
「自覚が無いんだな…。
色っぽくて…誰にも見せたく無いぐらいだ。」
そう言われたと思ったら、早急に唇が重なった。
それはとても荒々しくて…いつもとは違う激しさに、ほろ酔い加減の私は溺れてしまいそうになる。
「…っん…。」
息が出来ずに苦しくて、貪る様な濃厚なキスが降り注ぐ。最上階に到着するまで離してもらえず、足の力が抜けてくたっと座り込んでしまいそうになる。
そのタイミングでエレベーターは最上階に到着した。
「ごめん…堪らず暴走した。」
私を横抱きに抱き上げて、彼は小さくそう謝ってくる。呼吸が乱れたままの私はまともな返事もままならず…。
どうか誰ともすれ違いません様にと、心で唱えるしかなかった。
きっと見る見る真っ赤になっていく私の顔を見て驚いたであろう紫音さんが、体調を気にして聞いてくる。
「はい。とっても良い気持ちです。」
私はというと、あの新人歓迎会の日からずっと遠ざかっていたお酒を飲めて、なんだかとってもスッキリした気分になっていた。
「そろそろ冷えて来た、部屋に戻ろう。」
夕焼けもいつしか日が暮れて、一番星が見えてきた。
「はい、お食事楽しみですね。」
たった2口でほろ酔い気分になった私を連れて部屋へと戻るその途中、ロビー近くの掲示板に
『凱旋帰国 孤高のプリンス SION ピアノリサイタル』
と、高々書かれたポスターが一枚貼られているのに気付く。
ポスターにはピアノに向かう彼の横顔…
足を止め、ついじっくりと見入ってしまう。
今まで全く気付かなかったけど、もしかして彼のポスターは今や国内どこにでも貼ってあるのだろうか…?
「孤高のプリンス…。」
何気無しに口に出して言ってみる。
「…マジでこのキャッチコピーは無いと思う…。」
隣からはぁーと深いため息と共にそんな声が聞こえてきた。その顔を見上げると、片手を額に押し当て本当に嫌そうな顔をしている、紫音さん本人がそこに居た。
「…大変、紫音さん。ここにいてはいろんな人にバレてしまいませんか!?」
こんな有名人が、お忍で温泉旅行なんて…しかも孤高のプリンスが、女連れなんて知れたら大変な騒ぎになりかね無い。
ビールでぼぉーっとしていた頭を何とかフル回転させ、その彼の手を引っ張って半ば小走りで走り出す。
「心奈!?」
突然走らされた紫音さんが当惑の声をかけてくるが、それどころでは無い私は、とりあえずエレベーターまではと一気に走る。
久しぶりにこんなに走ったから、はぁはぁと息切れが激しいが、何とか到着したエレベーターに乗り込んでひと息吐く。
「ははっ…久しぶりに走ったんだが…。」
紫音さんはなぜか楽しそうに笑う。
「紫音さん…笑ってる場合では無いですよ。私なんかと、旅行してる事が、世間にバレたら大変です。」
息も絶え絶えにそう言うと、
「大丈夫だ、案外バレ無いものだから。」
平然とそう言ってのける。
「表に出る時、俺はいつも前髪を上げているだろ。普段はこんな風に目元まで前髪を下ろすているから、俺がSIONだと気付く人はそういない。」
ハハハ…と楽しそうに笑って、私の頬をそっと撫ぜてくる。
「それよりも…今は心奈のこの顔の方が気が気じゃ無い。」
どう言う事?そう言われても意味が分からず、私は首を傾げるばかり…
「自覚が無いんだな…。
色っぽくて…誰にも見せたく無いぐらいだ。」
そう言われたと思ったら、早急に唇が重なった。
それはとても荒々しくて…いつもとは違う激しさに、ほろ酔い加減の私は溺れてしまいそうになる。
「…っん…。」
息が出来ずに苦しくて、貪る様な濃厚なキスが降り注ぐ。最上階に到着するまで離してもらえず、足の力が抜けてくたっと座り込んでしまいそうになる。
そのタイミングでエレベーターは最上階に到着した。
「ごめん…堪らず暴走した。」
私を横抱きに抱き上げて、彼は小さくそう謝ってくる。呼吸が乱れたままの私はまともな返事もままならず…。
どうか誰ともすれ違いません様にと、心で唱えるしかなかった。



