求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛

この家に入ればスイッチ一つでなんだって事をなす。

お腹が空けば、家事代行が作り置きしていった豪華な食事を温めて食べればいいし、温かい出来立てを食べたければコンシェルジュに頼めばいい。

直階には専任と言っても過言ではない階付きのコンシェルジュがいる。スマホで彼に連絡して、心奈の喜びそうな食べ物を注文する。

仕事終わりに、あの泥棒騒ぎだ…きっと疲れもピークだろうと、食事を待つ間に風呂を勧める。
既に疲れ切った心奈は、ぼぉーっと電池が切れる瞬間の様だ。

「お風呂…頂きます。」
いつもよりだいぶゆっくりとした受答えに、いささか心配にはなるが手を取り風呂場に案内して、絶対寝るなと念を押す。

この間にゲストルームのシーツを替えて、部屋を暖め準備を整える。
まだ、引越し後の荷物が捌ききれていないダンボールが何個かそのままだったから、急いで別室に運び出す。

埃は大丈夫かと、普段使った事のない掃除機を持ち出し掃除をしてみる。
そんなレアな紫音を垣間見せ、彼は彼なりにテンションを上げているようだった。

そうこうバタバタとしているうちに、温かい食べ物が運ばれて来る。
ガラス張りのダイニングテーブルに並べて、ついでに冷蔵庫の中にある、作り置きの食事もいくつか温めて並べる。

気付けば、紫音が心奈を風呂に連れて行った時間から30分が過ぎていた。