求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛

「逆に俺が心奈に嫌われないように気を付けないとな。」

「紫音さんに失態なんてあるんですか?」
ここぞとばかりに聞いてみる。

「…洗濯物については、よくポケットにコレが入ってましたって家事代行から言われて、気付けばポケットの中身を入れるBoxが作られたし。普段から家事は一切しないから、片付けも苦手だ。…俺の方が駄目だな…。」
そんな彼の失態談はまだあって、惜し気もなく教えてくれる。

作曲に集中し過ぎると食事を食べ忘れる事。
寝起きが悪い事。時間にルーズな事。いつだって完璧に見えていたから、思いの外、人間ぽくって嬉しくなった。

つい、普段の飾らないこの人も見てみたいと欲が出てしまう。

「こんな俺で良かったら、一緒に住んでみませんか?」
微笑みと共にそう言われて、ドキンと心臓が高鳴った。

「1週間だけ…お時間下さい。」
と、丁寧に頭を下げてお願いする。

「近いうちに一度遊びにおいで。夕飯でも一緒に食べよう。…家事代行にお願いしとく。」

「それだったら私が何か作りますよ。お口に合うか分かりませんが。」

「嬉し過ぎる。いつにしようか?」
と、紫音さんも凄く喜んでくれた。
そんな話しをしていると、あっという間にコンビニに到着してしまい、また迎えの時に日時を決める事になった。

私もやっぱり次の約束がある事が嬉しくて、心なしが仕事もはかどり、いつもより心なしが早く時間が過ぎた。

そんな気分も上々の帰り道、金曜に紫音さんの家に遊びに行く事に決まり、何を作ろうかと相談しながら彼の車で家路に着く。