求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛

そんな事を考えていると、知らない間にため息が漏れる。
「何を考えてる?心奈が不安に思う事、俺に全部教えてくれないか?」
紫音さんにそう言いくるめられて、

「お家賃とか…絶対高いですよね?」
と、正直に話してみる。

「心奈に払わせる訳ないだろ。身一つで来てくれたって構わない。必要な物全部、買い揃えて待ってるから。」
そんな事を言って来るから慌てて止める。

「いえいえいえ…それは大丈夫ですから。
それに私…同棲とか初めてで、いろいろダメなところとか、お見せしてしまうと思うんです。紫音さんに…幻滅されたらと思うと…。」

「それこそ愚問だ。俺だって誰かと暮らした事は無いが、心奈となら絶対楽しいしか無いはずだ。駄目なところとは…例えば何?」
思いがけず聞き返されてタジタジになってしまう。

「た、例えば…休日とか、ずっとパジャマで一日中ゴロゴロしちゃいますし…。」

「そんなの可愛いしか無い。後は?」
間髪入れずに返事が返ってくる。

「後は…洗濯とか、ティッシュがポケットに入ったまま洗っちゃったりとか…。」
最近やらかした失敗を恥ずかしながら暴露すると、

「心奈に家事を押し付ける気はさらさら無い。家事代行を引き続き雇えば良いだけだよ。」
そう言って直ぐに反論されるから、私も若干ムキになって、

「おでん煮込んでたのを忘れて、鍋ごとダメにしてしまった事があります…。」

「我が家のコンロは安全機能付きだから問題ない。」
と、一喝されてしまう。

負けじとばかり、他にもいろいろと今までの失態を曝け出してしまうが、その都度瞬時に肯定されたり、対応策を練られ解決してしまう…。
結局…何をやらかしたとしても…紫音さんにとっては、可愛いしか無いらしい…。これは勝負にもならないと、私もついには根を上げた。