そんな穏やかな日々を過ごし、1か月程の月日が流れる。相変わらず心配症な紫音さんは、私の世話を焼きたがり、なんだかんだと月の半分は送迎されている。

今日も帰りが雨予報だからと迎えに来てくれた。
「ありがとうございます。」
いつものように丁寧に扱われ、バイト先のコンビニへと車が走り出す。

「なぁ、心奈。思ったんだけど…。」
珍しく言い淀む。

「何ですか?」
聞き返すと、一瞬こちらを伺い見て、
「…俺の家に住まないか?」
と、言って来る。
「えっ⁉︎」
驚き過ぎて思考が止まる。

「実は、俺の家からコンビニには歩いて5分ほどなんだ。一緒に暮らせばいつもアプリを見てハラハラして見守る事も無くなるし、心奈のアパートの住人に目を光らせる事もしなくて良くなる。俺の心の安泰の為にも、考えてみてくれないか?」

私達は知り合ってまだ2か月ほどしか経ってない。まだまだお互い知らない事ばかりで…男女の関係だって、清いままだ…。

「心奈だって俺がちゃんと飯食べてるかとか、寝てるのか心配してくれるだろ?お互い一緒に住めば、そう言う心配事が解消されてより安心なんじゃないかな?」

「そ、それは…そうですけど……。」
直ぐには答えが出ず言葉を濁す。

「もちろん無理矢理どうこうしようなんて、これっぽちも考えてない。心奈に嫌われたら俺は生きていけない。シェアハウスみたいな感覚で気軽に考えて欲しい。」
必死になってフォローし始める彼がなんだか可愛くて、ふふっと笑ってしまう。 
「なんでここで笑う…?」
紫音さんに不服そうな目を向けられて、慌てて否定する。
「ごめんなさい…なんだか可愛くて。分かりました。ちゃんと考えてみます。」
確かにこの人の貴重な時間をこれ以上、送迎に使ってしまうのは勿体無い。

かと言って、今のアパートも越して来たはゎかりだし、違約金だって発生するはず…それに、家賃を折半したとして私払えるのかな…。いろいろ考え初めてみると、やっぱり私達は釣り合わないと思ってしまう…。