求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛

品出しに戻ろうとすると、今度は駆け込んできた女性が小さなビンを差し出して来る。

『早くしてっ!』とでも言いたげだ。
ビンにはウコンの文字…
 
手を見れば真っ赤な付け爪に輝くダイヤの指輪。夜のお店の人だろう…いわゆるキャバ嬢。

『お疲れ様です。』と心で伝えお釣りを渡す。
男性恐怖症の私にはまず出来ないお仕事だから、尊敬すら覚える。

今の家賃を考えれば、高収入の仕事に就がなければやっていけないのが現実だけど…。
はぁーと人知れずため息を吐いて、お客様を見送る。

その後もポツポツと常連客が来て、飲料の補充に検品作業などを、淡々とこなしていると、段々に空が明るくなっていく。

気が付けば薄っすら地面には雪が積もる。

都会の雪はパニックを生む。これは雪対応のグッズを並べなければと、倉庫に入り準備をする。

雨が降り出せば、傘やカッパ、タオルなんかがよく売れる。それを素早く察知して店頭に出すのも店員の役割だ。