(心奈side)
私はシンデレラ…魔法をかけられて、今夜だけ紫音さんの奥さんになる。自分自身にそう言い聞かせエレベーターに乗りこむ。
先程、向かう車の中で初めてこのパーティーの詳細を聞く。今夜のパーティーは新しく所属するレーベル会社の30周年を祝うもので、多くのアーティストも参加するという。
そんな凄いパーティーに…社会不適合者な私が参加して良い訳はない…。場違い感も甚だしいけれど、紫音さんを1人置いて今更逃げ出すなんて無理…。
エレベーターが最上階に到着して、私は深呼吸して、足を一歩前に踏み出す。
そこは、空中庭園のようになっていて、暗闇に浮かぶガラス張りの通路が、会場までを照らし出していた。その幻想的な風景にしばし足を止めて見つめてしまう。
「行こうか。」
紫音さんの冷静な声に我に帰り、こくんと頷き歩き出す。繋がれたままの手が、とても心強くて気持ちをいくらか落ち着かせてくれた。
会場前の広間には挨拶を交わす人々や、飲み物を運ぶスタッフなどが行き交い、既に活気に満ちている。
私は思わず、紫音さんの手をぎゅっと握り直す。すると同じようにぎゅっと握り返してくれるから、それだけで少し勇気をもらえた気がした。
ドキドキと自分の心臓の音だけが、妙に大きく聞こえてくる。
紫音さんに導かれるまま会場に足を踏み入れると、途端に周りが騒つき出し、好奇の目を向けられている事に気付く。
上手く笑えているだろうか…緊張で頭の中が真っ白になる。
「こんばんは。SIONさん今日はありがとうございます。」
会場に入って早々、紫音さんに声をかけてくる白髪の中年男性…
見た感じどこかのお偉いさんだろうか…?
握られていた手をパッと離す。
「こんばんは。西園寺社長、本日はおめでとう御座います。」
紫音さんが立ち止まり挨拶をするので、一歩後ろに下がり一緒に頭を下げる。
「いやいや。我が社も貴方と一緒に仕事が出来る事を楽しみにしておりますよ。今夜はどうぞよろしくお願いします。」
気さくな雰囲気の社長は、綺麗な秘書のような女性を引き連れて、挨拶回りをしているようだ。
「SIONさんは来月アルバムが完成予定なんですよ。」
秘書の方の紹介に、そうかそうかと西園寺社長は微笑みを浮かべる。
「我が社はクラシックの分野が薄くて、今1番力を入れて行きたいジャンルなんですよ。貴方が参戦してくれたら、一気に地盤が固まりますよ。ヨーロッパでの活躍に、そのルックス。これからがとても楽しみです。日本でのご活躍、大変楽しみにしております。」
手を差し出されて握手を交わしている。
私は後ろでそう聞いて、そんなに凄い人なんだなと改めて実感した。
「ところで、後ろの可愛らしい女性は?紹介しては頂けませんか?」
西園寺社長の声でビクッと体が揺れ、急に心拍が上がる。
「ご紹介が遅れました、私の妻の心奈です。」
紫音さんが滑らかに私を紹介してくれるので、
「初めまして、主人がいつもお世話になっております。」
と、頭を下げる。
「これは初々しい奥様ですね。可愛らしい。彼を陰ながら支えてくれた方ですね。どうぞ、これからもよろしくお願いします。」
西園寺社長は私にもにこやかに微笑みをくれる。
「世帯を持ってからこそ男の力量が問われます。紫音君これから頑張って下さい。」
紫音さんの肩をトントンして、西園寺社長は次の挨拶へと足早に去って行った。
紫音さんと2人、揃って頭を下げて送り出す。
頭を上げた瞬間…秘書の女性と不意に目が合い、バチっと火花が弾けた気がして驚く。
今のはなんだったのだろう…。
2人の後ろ姿を見つめて首を傾げる。
「心奈、良い感じだ。ありがとう。」
紫音さんの声で彼に目を向けると、満面の笑みをくれるから、嬉しくなって気持ちが上がる。
「私、大丈夫でしたか?ちゃんと出来てましたか?」
そう言って差し出された手をぎゅっと握って歩き出す。
「完璧だよ。」
と紫音さんは満面の笑みを返してくれた。
私はシンデレラ…魔法をかけられて、今夜だけ紫音さんの奥さんになる。自分自身にそう言い聞かせエレベーターに乗りこむ。
先程、向かう車の中で初めてこのパーティーの詳細を聞く。今夜のパーティーは新しく所属するレーベル会社の30周年を祝うもので、多くのアーティストも参加するという。
そんな凄いパーティーに…社会不適合者な私が参加して良い訳はない…。場違い感も甚だしいけれど、紫音さんを1人置いて今更逃げ出すなんて無理…。
エレベーターが最上階に到着して、私は深呼吸して、足を一歩前に踏み出す。
そこは、空中庭園のようになっていて、暗闇に浮かぶガラス張りの通路が、会場までを照らし出していた。その幻想的な風景にしばし足を止めて見つめてしまう。
「行こうか。」
紫音さんの冷静な声に我に帰り、こくんと頷き歩き出す。繋がれたままの手が、とても心強くて気持ちをいくらか落ち着かせてくれた。
会場前の広間には挨拶を交わす人々や、飲み物を運ぶスタッフなどが行き交い、既に活気に満ちている。
私は思わず、紫音さんの手をぎゅっと握り直す。すると同じようにぎゅっと握り返してくれるから、それだけで少し勇気をもらえた気がした。
ドキドキと自分の心臓の音だけが、妙に大きく聞こえてくる。
紫音さんに導かれるまま会場に足を踏み入れると、途端に周りが騒つき出し、好奇の目を向けられている事に気付く。
上手く笑えているだろうか…緊張で頭の中が真っ白になる。
「こんばんは。SIONさん今日はありがとうございます。」
会場に入って早々、紫音さんに声をかけてくる白髪の中年男性…
見た感じどこかのお偉いさんだろうか…?
握られていた手をパッと離す。
「こんばんは。西園寺社長、本日はおめでとう御座います。」
紫音さんが立ち止まり挨拶をするので、一歩後ろに下がり一緒に頭を下げる。
「いやいや。我が社も貴方と一緒に仕事が出来る事を楽しみにしておりますよ。今夜はどうぞよろしくお願いします。」
気さくな雰囲気の社長は、綺麗な秘書のような女性を引き連れて、挨拶回りをしているようだ。
「SIONさんは来月アルバムが完成予定なんですよ。」
秘書の方の紹介に、そうかそうかと西園寺社長は微笑みを浮かべる。
「我が社はクラシックの分野が薄くて、今1番力を入れて行きたいジャンルなんですよ。貴方が参戦してくれたら、一気に地盤が固まりますよ。ヨーロッパでの活躍に、そのルックス。これからがとても楽しみです。日本でのご活躍、大変楽しみにしております。」
手を差し出されて握手を交わしている。
私は後ろでそう聞いて、そんなに凄い人なんだなと改めて実感した。
「ところで、後ろの可愛らしい女性は?紹介しては頂けませんか?」
西園寺社長の声でビクッと体が揺れ、急に心拍が上がる。
「ご紹介が遅れました、私の妻の心奈です。」
紫音さんが滑らかに私を紹介してくれるので、
「初めまして、主人がいつもお世話になっております。」
と、頭を下げる。
「これは初々しい奥様ですね。可愛らしい。彼を陰ながら支えてくれた方ですね。どうぞ、これからもよろしくお願いします。」
西園寺社長は私にもにこやかに微笑みをくれる。
「世帯を持ってからこそ男の力量が問われます。紫音君これから頑張って下さい。」
紫音さんの肩をトントンして、西園寺社長は次の挨拶へと足早に去って行った。
紫音さんと2人、揃って頭を下げて送り出す。
頭を上げた瞬間…秘書の女性と不意に目が合い、バチっと火花が弾けた気がして驚く。
今のはなんだったのだろう…。
2人の後ろ姿を見つめて首を傾げる。
「心奈、良い感じだ。ありがとう。」
紫音さんの声で彼に目を向けると、満面の笑みをくれるから、嬉しくなって気持ちが上がる。
「私、大丈夫でしたか?ちゃんと出来てましたか?」
そう言って差し出された手をぎゅっと握って歩き出す。
「完璧だよ。」
と紫音さんは満面の笑みを返してくれた。