求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛

車まで手を繋ぎ歩きいつものように助手席に乗せてくれた。

帰りの車内はとても静かで、少しの寂しさを感じながら、でも、その沈黙さえも心地良くて…。
あっという間に自宅近くのコンビニの駐車場に到着してしまう。

これで、さよならをするのはとても寂しくて…。お互いがお互いを探り見る。

沈黙を破ったのは紫音さんの方だった。

「心奈に、返事をもらう時が来た…。
これで最後かもしれないと思うと名残惜しいから、歩いて家まで送らせてくれないか?
かと言って、駄目なら駄目だと潔く諦めるから大丈夫だ。」
寂しそうな笑顔を見せる彼が、なんだか可哀想で申し訳なくなってしまう。

私に勇気が無いから…きっと彼を困らせてしまっている。
私がこくんと頷くのを合図に、いつものように助手席に回り手を差し出して来てくれる。

手を繋いだまま暗闇を歩く。
自宅アパートまでの道のりは、車一台通るのがやっとの細道で…2人の足音だけが響く。

病気になって以来、男性とこんなに長く2人っきりになった事は無い。つい、1週間前まではただのコンビニの店員と客の関係だったのに、今はこんなにも離れ難い。

こんな人とはもう二度と会えないだろう…。

迷いに迷って…まだ、自分の中でも返事の答えが出ていないままだ。