この人のこういう所が安心するんだなと、改めて実感する。
メニューが決まり、提供を待っている間もボーっと空を眺めてしまう私に、話しかける事もなく、同じように空を眺めてくれている。
この無言の時間もなんだか心地良くて。
ああ、私、この人が好きだなぁと自然と思う。
それから目の前の机が鉄板プレートに早変わりして、肉や魚介類がところ狭しと並べられる。
「こちらで焼きましょうか?」
と、ウェイターが言ってくるから、すかさず紫音さんが、
「大丈夫です。自分達で焼きますから。」
自らトングを握ってくれる。
「それではごゆっくり。」
と、頭を下げて去って行くウェイターを見送る。
しばらくするとジュージューと、美味しそうな匂いを出しながら、肉から油が溢れてくる。
「焼き色はどのくらい?レアかミディアムどっちが良い?」
と、紫音さんが聞いて来る。
彼の大切な手が火傷しては大変と思い、
「私が焼きますから。」
何気なく手を出してトングを握ろうとすると、サッと手を引かれてしまう。
「俺が焼く。今日は心奈を癒したくて連れて来たんだ。焼き加減を言ってくれたら良いから。」
と、譲ってくれようとしない。
「紫音さんの大事な手が…火傷しちゃうと大変です。」
心配になって、少し強引にトングを奪おうと手を伸ばすのに、
「俺がやる。何も出来ない男にしないでくれ。」
と子供のように嫌だとあらがう。それがなんだか可愛くて、ふふふっと笑ってしまう。
紫音さんも釣られ笑っている。
「これ焼けたんじゃないか?」
1番始めに私のお皿に乗せてくれる。
「食べてみて。」
と、顔を覗いて感想を待っている。
私は仕方なく『いただいきます』と手を合わせ食べてみる。
「うわぁ。すっごく柔らかくて美味しいです。」
その柔らかさに感動して私が目を丸くする。それを見て嬉しそうな顔で紫音さんが、次から次へとお皿にお肉を乗せ始める。
「紫音さんも食べて下さい。」
と、慌てて箸を置きトングを握ろうと再度試みる。
するとそのタイミングでお肉の油がピチピチっと跳ねた。驚き慌てて彼の手から強引にトングを取り上げて、
「大丈夫でしたか⁉︎」
と、慌てふためき火傷がないかくまなく探す。
ピアノを弾く手は大事な商売道具なのだから…そう思って手を取り、長い指の一本一本にも注意深く火傷を探る。
メニューが決まり、提供を待っている間もボーっと空を眺めてしまう私に、話しかける事もなく、同じように空を眺めてくれている。
この無言の時間もなんだか心地良くて。
ああ、私、この人が好きだなぁと自然と思う。
それから目の前の机が鉄板プレートに早変わりして、肉や魚介類がところ狭しと並べられる。
「こちらで焼きましょうか?」
と、ウェイターが言ってくるから、すかさず紫音さんが、
「大丈夫です。自分達で焼きますから。」
自らトングを握ってくれる。
「それではごゆっくり。」
と、頭を下げて去って行くウェイターを見送る。
しばらくするとジュージューと、美味しそうな匂いを出しながら、肉から油が溢れてくる。
「焼き色はどのくらい?レアかミディアムどっちが良い?」
と、紫音さんが聞いて来る。
彼の大切な手が火傷しては大変と思い、
「私が焼きますから。」
何気なく手を出してトングを握ろうとすると、サッと手を引かれてしまう。
「俺が焼く。今日は心奈を癒したくて連れて来たんだ。焼き加減を言ってくれたら良いから。」
と、譲ってくれようとしない。
「紫音さんの大事な手が…火傷しちゃうと大変です。」
心配になって、少し強引にトングを奪おうと手を伸ばすのに、
「俺がやる。何も出来ない男にしないでくれ。」
と子供のように嫌だとあらがう。それがなんだか可愛くて、ふふふっと笑ってしまう。
紫音さんも釣られ笑っている。
「これ焼けたんじゃないか?」
1番始めに私のお皿に乗せてくれる。
「食べてみて。」
と、顔を覗いて感想を待っている。
私は仕方なく『いただいきます』と手を合わせ食べてみる。
「うわぁ。すっごく柔らかくて美味しいです。」
その柔らかさに感動して私が目を丸くする。それを見て嬉しそうな顔で紫音さんが、次から次へとお皿にお肉を乗せ始める。
「紫音さんも食べて下さい。」
と、慌てて箸を置きトングを握ろうと再度試みる。
するとそのタイミングでお肉の油がピチピチっと跳ねた。驚き慌てて彼の手から強引にトングを取り上げて、
「大丈夫でしたか⁉︎」
と、慌てふためき火傷がないかくまなく探す。
ピアノを弾く手は大事な商売道具なのだから…そう思って手を取り、長い指の一本一本にも注意深く火傷を探る。



