求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛

コンビニ近くの駅ロータリーで車を止めて、筧さんは…紫音さんは、来た時と同じように、先に車を降りてドアを開けてくれる。

そして同じように手を差し出してくるけど、それは丁寧に断って、

「ありがとうございました。」
と頭を下げてお礼を言う。

「こちらこそ、ありがとう。帰りも迎えに来たいけど駄目かな?」

「そ、そんな…とんでもないです。紫音さんはお仕事もあるでしょうし、私ならバスもありますから、気にしないでください。」
慌ててそう言って断るのに…

「1週間なんてあっと言う間だ。心奈ともっと親しくなりたいのに話す時間も限られる。この送迎だけが唯一貴重な君との時間なんだ。どうか俺の楽しみを取り上げないでくれ。」
そう懇願するようにお願いされて、断れきれなくなる。

「お仕事に…支障のない程度でお願いします…。」
そう言うしか他にない。

「ありがとう。じゃあ、また8時にここで。」
良かったと、安心したような笑顔で車に戻って行く紫音と手を振り合って、少しだけ名残惜しい気持ちになった。

それから一週間毎日、送り迎えをしてくれて、私も申し訳ない気持ちで、お返しにお惣菜を作って渡したり、コンビニのスイーツを買って渡したりした。

不思議と彼に対しては発作が起きなかった。

そのおおらかな人柄だろうか…?

『これは大丈夫?』『こうされると嫌?』『こういうのは平気?』
そう言って、些細な事でさえちゃんと確認を取ってくれて、私を怖がらせないよう触れないように、いろいろ配慮してくれている。

それにいつも私を喜ばせたくて、毎日何かを差し入れてくれるその心意気も嬉しかった。

こんな優しい人に会った事が無い。
始めは遠慮気味だった私も、段々彼のペースに乗り込まれ、気付けば一緒に笑う事が出来るようになっていった。