今日もいつもと変わらない時間にコンビニへと出勤する。
自転車で片道20分程の場所に先週引っ越したばかりだ。築20年の木造アパートはリフォームずみで、住み心地も今のところ悪くない。
コンビニまでの距離は少し遠いが、日頃の運動不足を解消出来る良い機会だと、毎日自転車を漕いでいる。
今夜は冷え込む。もしかしたら雪が降るかもしれない…。
「ここちゃんおはよう。体調はどう?」
昨日心配をかけてしまった店長が、私の事を気にかけてくれる。
「おはようございます…もう大丈夫です。ご心配おかけしました。」
私は若干気まずくて、苦笑いしてお店に入る。
今夜のバイト仲間は中年男性の水本さんだ。退職後の時間潰しで、バイトを始めたらしい初老の男性だから、私としては緊張なく接する事の出来る少ない男性の1人だ。
私の男性恐怖症は、20代〜30代男性相手に現れやすく、中年男性以上は比較的大丈夫だったりする。
必要以上に会話はせず、誰とも深入りしないようにここ半年は生きてきた。これからもそうやって、自分で回避しながら生きて行くしかないのだと思っているけれど…。
朝方になり立ち寄る人もちらほら増えて来た頃に、不意に水本さんが話しかけて来る。
「うちの奥さんがさぁ、知り合いの息子さんのお見合い相手を探してるらしくて、誰か良い子いないかって言うんだけど、葉月ちゃんお見合いとかする気ないかなぁ?もしかして彼氏とかいる?」
気さくな感じの水本さんはいつもフレンドリーで、いろいろな話をしてくるのだけど…。
カウンター内でおでんの容器を洗浄しているタイミングで話しかけられて、
「私…ですか?いませんが…お見合いする気は…今のところ無いですね…。」
と、若干戸惑いそっけなく断りを込めて返事をすると、
「葉月ちゃんしっかりしてるし良い奥さんになると思うんだよねー。彼氏いないなら一回くらい会ってみない?」
推し気味にそう水本さんが迫って来る。
「えっと…少し…考えさせて頂けますか?私、極度の人見知りなので、知らない人に会うのってとても勇気がいるんです。」
断り切れないと思い、とりあえず返事を先延ばしする事にする。
「そうなの?何なら僕がついていってあげようか?そんな堅苦しい感じじゃないからさ。ちょっと一緒に食事するぐらいだから、どう?」
それでも、めげずに水本さんはやたらと推してくるから、困惑気味にどう断ろうかと思案する。
そのタイミングで、
「ちょっと水本さん、仕事場でそういうプライベートな話し辞めてあげて。ここちゃんだっていろいろあるんだからさ。」
店長が何気に庇ってくれた。
「だってこんなに良い子なのに、夜中のコンビニなんかで働いてて、勿体無いと思ってさぁ。」
水本さんのお節介はとどまるところを知らないらしい。いよいよなんて返すべきか迷ってしまうが、
「夜中のコンビニの何がいけないんですか?」
コンビニの悪口は許さないとばかりに、店長が水本さんに歯向かっていくから、
助かった私は、1人黙々と掃除をして今夜のバイトを乗り切る。
朝7時45分。あと15分で今日も終わりだと、時計を見ながらレジをこなしていたタイミングで、
「体調、大丈夫そうですね。」
と、ぼそっと呟く声を聞く。
えっ?と思って手を見ると、すらっと長い指先にドキッとなる。
この手は…昨日お釣りをやっと渡せたお客様だ…。
「あっ…、昨日はご迷惑をおかけしました。」
と頭を下げて謝罪をする。
「いや…別に何も…。体調悪そうだったので気になっただけで、大丈夫そうならそれで…。」
バリトンボイスの良い声で呟く彼は、昨日とは違う雰囲気を感じ、そっとその顔を垣間見る。
この人…手も綺麗だけど、顔も綺麗…。
なぜ今まで気付かなかったんだろうと思うくらい、そこら辺にはいない整った綺麗な顔立ちをしていた。
切れ長の目は綺麗なアーモンド型。スーッと通った鼻筋に、きゅっと薄い唇は男らしさを醸し出している。
本当にモデルとかではないだろうかと思うぐらいで、一瞬吸い込まれた様に時が止まる。
「えっと…すいません。お会計は180円になります。」
ハッとして慌てて接客に戻る。
彼はいつもの缶コーヒーだけを片手に持ち、丁度の小銭を渡してくる。
「丁度頂きます。ありがとうございました。」
と、他のお客様と同じように対応する。
「…あの、この後お時間少し頂けませんか?折り言ってお話ししたい事があります。」
本当に昨日と同じ人なのだろうか…?
何となく歯切れが悪い感じでそう話しかけてくる。
お釣りの事で不備でもあったのかな…?無下にも出来ず、
「8時に退勤しますので、外のベンチ辺りでお待ち頂けますか?」
と、小声で伝える。
この時の私は特に深く考えもせず、仕事の一環として答えたに過ぎなかった。
自転車で片道20分程の場所に先週引っ越したばかりだ。築20年の木造アパートはリフォームずみで、住み心地も今のところ悪くない。
コンビニまでの距離は少し遠いが、日頃の運動不足を解消出来る良い機会だと、毎日自転車を漕いでいる。
今夜は冷え込む。もしかしたら雪が降るかもしれない…。
「ここちゃんおはよう。体調はどう?」
昨日心配をかけてしまった店長が、私の事を気にかけてくれる。
「おはようございます…もう大丈夫です。ご心配おかけしました。」
私は若干気まずくて、苦笑いしてお店に入る。
今夜のバイト仲間は中年男性の水本さんだ。退職後の時間潰しで、バイトを始めたらしい初老の男性だから、私としては緊張なく接する事の出来る少ない男性の1人だ。
私の男性恐怖症は、20代〜30代男性相手に現れやすく、中年男性以上は比較的大丈夫だったりする。
必要以上に会話はせず、誰とも深入りしないようにここ半年は生きてきた。これからもそうやって、自分で回避しながら生きて行くしかないのだと思っているけれど…。
朝方になり立ち寄る人もちらほら増えて来た頃に、不意に水本さんが話しかけて来る。
「うちの奥さんがさぁ、知り合いの息子さんのお見合い相手を探してるらしくて、誰か良い子いないかって言うんだけど、葉月ちゃんお見合いとかする気ないかなぁ?もしかして彼氏とかいる?」
気さくな感じの水本さんはいつもフレンドリーで、いろいろな話をしてくるのだけど…。
カウンター内でおでんの容器を洗浄しているタイミングで話しかけられて、
「私…ですか?いませんが…お見合いする気は…今のところ無いですね…。」
と、若干戸惑いそっけなく断りを込めて返事をすると、
「葉月ちゃんしっかりしてるし良い奥さんになると思うんだよねー。彼氏いないなら一回くらい会ってみない?」
推し気味にそう水本さんが迫って来る。
「えっと…少し…考えさせて頂けますか?私、極度の人見知りなので、知らない人に会うのってとても勇気がいるんです。」
断り切れないと思い、とりあえず返事を先延ばしする事にする。
「そうなの?何なら僕がついていってあげようか?そんな堅苦しい感じじゃないからさ。ちょっと一緒に食事するぐらいだから、どう?」
それでも、めげずに水本さんはやたらと推してくるから、困惑気味にどう断ろうかと思案する。
そのタイミングで、
「ちょっと水本さん、仕事場でそういうプライベートな話し辞めてあげて。ここちゃんだっていろいろあるんだからさ。」
店長が何気に庇ってくれた。
「だってこんなに良い子なのに、夜中のコンビニなんかで働いてて、勿体無いと思ってさぁ。」
水本さんのお節介はとどまるところを知らないらしい。いよいよなんて返すべきか迷ってしまうが、
「夜中のコンビニの何がいけないんですか?」
コンビニの悪口は許さないとばかりに、店長が水本さんに歯向かっていくから、
助かった私は、1人黙々と掃除をして今夜のバイトを乗り切る。
朝7時45分。あと15分で今日も終わりだと、時計を見ながらレジをこなしていたタイミングで、
「体調、大丈夫そうですね。」
と、ぼそっと呟く声を聞く。
えっ?と思って手を見ると、すらっと長い指先にドキッとなる。
この手は…昨日お釣りをやっと渡せたお客様だ…。
「あっ…、昨日はご迷惑をおかけしました。」
と頭を下げて謝罪をする。
「いや…別に何も…。体調悪そうだったので気になっただけで、大丈夫そうならそれで…。」
バリトンボイスの良い声で呟く彼は、昨日とは違う雰囲気を感じ、そっとその顔を垣間見る。
この人…手も綺麗だけど、顔も綺麗…。
なぜ今まで気付かなかったんだろうと思うくらい、そこら辺にはいない整った綺麗な顔立ちをしていた。
切れ長の目は綺麗なアーモンド型。スーッと通った鼻筋に、きゅっと薄い唇は男らしさを醸し出している。
本当にモデルとかではないだろうかと思うぐらいで、一瞬吸い込まれた様に時が止まる。
「えっと…すいません。お会計は180円になります。」
ハッとして慌てて接客に戻る。
彼はいつもの缶コーヒーだけを片手に持ち、丁度の小銭を渡してくる。
「丁度頂きます。ありがとうございました。」
と、他のお客様と同じように対応する。
「…あの、この後お時間少し頂けませんか?折り言ってお話ししたい事があります。」
本当に昨日と同じ人なのだろうか…?
何となく歯切れが悪い感じでそう話しかけてくる。
お釣りの事で不備でもあったのかな…?無下にも出来ず、
「8時に退勤しますので、外のベンチ辺りでお待ち頂けますか?」
と、小声で伝える。
この時の私は特に深く考えもせず、仕事の一環として答えたに過ぎなかった。



