求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛

羞恥心で一杯になったところで、突然フワッと抱き上げられる。

「ひゃっ⁉︎」
と、驚きと共に思わず首元にぎゅっと抱きついてしまう。

「俺の心奈を傷付けないでくれ…。」
意図なく急接近した顔にチュッと口付けされて、頭の中はパニック状態、何が起こっているのか分からず真っ白になる。

「このままベッドに運んでもいいか?」
静かに告げる彼の目に初めて浮かぶ欲情の灯火を見る。

そうなりたいと思ってはいたけれど、それが今このタイミングで…?まだ、婚姻届だって書いてない…そう思い、何気なく目線をテーブルに向けると、

「煽って来たのは心奈だよ。俺がここまで我慢してどうにか耐え抜いて、せめてちゃんと籍を入れてからだと決めていたのに…。」
だけどもう、止められないと彼は言って歩き出す。

「ちょ、ちょっと待って…あの、お、お風呂とか…その、せめてちゃんと整えさせて…下さい。」
寝室に向かおうとする彼に、急いで最低限のお願いをする。

なんせこういう行為は初めてなのだから、どうしていいか分からない。その頃を彼に伝えるべきだろうか…きっと見抜いているとは思うけど…。

「分かった…。本当は1分1秒だって離れたく無いけど…」
そう言いながらも、向きを変えちゃんとバスルームへと連れて行ってくれる。

有り難く時間を頂いて、いつもより丁寧に身体を洗って、出来る限りのケアをする。

すっかりピカピカになって、バスルームを出てパジャマに着替えるけれど…下着はつけるべき?普段寝る時ブラはしない派だったけど…こういう時、パジャマを脱がされたら直ぐに素肌になってしまう。

これは色気も何も無いのでは…?
正確が分からない私は、とりあえずお気に入りのブラとショーツを身に付けて、パジャマに着替えて髪を乾かす。

やっと全てのケアを終えて廊下に出て見れば、目の前の壁によそりかかって紫音さんが待っていた。

「えっ!?ごめんなさい…ずっと待たせてましたか?」
結構のんびり入ってしまったけど…もっと早く出るべきだったと反省する。

「…好きでここにいたんだ、気にしなくていい。俺も風呂に入るから少し待ってて。」
頭をポンポン撫ぜられて、彼がすれ違いでバスルームに入って行った。