それから1週間後…梶原の自供により、西園寺涼子によって私の自宅やバイト先が教えられたという事を聞く。なぜ何の接点もなかった彼女が私の事を知っていたのか…。
紫音さんが憶測するには、きっと興信所を雇って調べさせたんだろうと言う。金さえ払えば簡単な事なのだと…。
『俺も君の事が知りたくて、実は調べさせてもらった節がある。君から聞けば良かったのだけど、今となっては卑怯な事をしたと後悔してる』と打ち明けられた。
私はそんな事は無いと伝えた。私の事を理解し守ろうとする彼の優しさは充分過ぎるくらい分かっているから、それは行き過ぎた事であっても嬉しいと思ったから。
当時の嫌な思い出は、未だに言葉にするのも辛く、出来れば忘れ去ってしまいたい。
だけどもし、この先取調べが進めば梶原は窃盗罪だけで無く、ストーカー規制法でも処罰されるだろうと紫音さんは言っていた。その時は、私が証言台に立つ事になるかもしれないと…。
彼の心配性と過保護は益々度を上げて行く今日この頃で、それは私にとっては守られている安心感で心地が良い。
それから、これ以上他人に邪魔されたく無いと言う紫音さんから『結婚しよう』とシンプルなプロポーズをもらう。
『こんな私で良ければ…よろしくお願いします。』と返事をしたら、子供のような笑顔をくれた。
そして今…ガラスのダイニングテーブルに向き合い座り、紫音さんが先程から真剣な面持ちで、婚姻届にペンを走らせている。
コツコツと響くペン先のリズムを聴きながら、私は息を殺してその長く綺麗な指を見つめていた。
「心奈、そんなに見られているとさすがに俺も緊張するよ。」
紫音さんが微笑みと共にこちらに目を向ける。
穏やかな優しい笑顔に見つめられると、私は今だにドキドキと胸が弾んでしまう。
「ごめんなさい…つい。」
恥ずかしくなって目を伏せると、
「いいんだけどね。君が俺の手を気に入ってくれてるのは知ってるから。この手もだけど、心も、俺の全ては心奈のものだよ。」
その意味かよく分からず、首を傾げて紫音を見ると、熱い眼差しを送られる。
「私の…もの…?」
「そうだよ。だから好きにしてくれていいんだ。これは、そういう契約書みたいなものなんだから。」
婚姻届をそんな風に解釈する人は、まず紫音さん以外にいないと思うけど…。
「じゃあ、私は紫音さんのものですね。」
と、微笑みながら言うと、
「心奈は心奈自身のものだから、俺はいつでも、君に触れる時は許しを乞うよ。」
それは…私が抱えている病気のせいで…?
それとも…私自身が初心者過ぎて気を使わせてしまってるのだろうか…。
そう思うのに…目の前にいる紫音さんに直接聞く事の出来ない自分が、情けなくて嫌になる。
紫音さんが憶測するには、きっと興信所を雇って調べさせたんだろうと言う。金さえ払えば簡単な事なのだと…。
『俺も君の事が知りたくて、実は調べさせてもらった節がある。君から聞けば良かったのだけど、今となっては卑怯な事をしたと後悔してる』と打ち明けられた。
私はそんな事は無いと伝えた。私の事を理解し守ろうとする彼の優しさは充分過ぎるくらい分かっているから、それは行き過ぎた事であっても嬉しいと思ったから。
当時の嫌な思い出は、未だに言葉にするのも辛く、出来れば忘れ去ってしまいたい。
だけどもし、この先取調べが進めば梶原は窃盗罪だけで無く、ストーカー規制法でも処罰されるだろうと紫音さんは言っていた。その時は、私が証言台に立つ事になるかもしれないと…。
彼の心配性と過保護は益々度を上げて行く今日この頃で、それは私にとっては守られている安心感で心地が良い。
それから、これ以上他人に邪魔されたく無いと言う紫音さんから『結婚しよう』とシンプルなプロポーズをもらう。
『こんな私で良ければ…よろしくお願いします。』と返事をしたら、子供のような笑顔をくれた。
そして今…ガラスのダイニングテーブルに向き合い座り、紫音さんが先程から真剣な面持ちで、婚姻届にペンを走らせている。
コツコツと響くペン先のリズムを聴きながら、私は息を殺してその長く綺麗な指を見つめていた。
「心奈、そんなに見られているとさすがに俺も緊張するよ。」
紫音さんが微笑みと共にこちらに目を向ける。
穏やかな優しい笑顔に見つめられると、私は今だにドキドキと胸が弾んでしまう。
「ごめんなさい…つい。」
恥ずかしくなって目を伏せると、
「いいんだけどね。君が俺の手を気に入ってくれてるのは知ってるから。この手もだけど、心も、俺の全ては心奈のものだよ。」
その意味かよく分からず、首を傾げて紫音を見ると、熱い眼差しを送られる。
「私の…もの…?」
「そうだよ。だから好きにしてくれていいんだ。これは、そういう契約書みたいなものなんだから。」
婚姻届をそんな風に解釈する人は、まず紫音さん以外にいないと思うけど…。
「じゃあ、私は紫音さんのものですね。」
と、微笑みながら言うと、
「心奈は心奈自身のものだから、俺はいつでも、君に触れる時は許しを乞うよ。」
それは…私が抱えている病気のせいで…?
それとも…私自身が初心者過ぎて気を使わせてしまってるのだろうか…。
そう思うのに…目の前にいる紫音さんに直接聞く事の出来ない自分が、情けなくて嫌になる。