求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛

「そうだったんですね…。」
全て筒抜けなのかと思うと、急に恥ずかしくなり俯こうとすると、大きな手で頬を包まれて目線を合わせられる。

「第一、心奈に関して心配症の俺が、何の予防もせず手の届かない場所に行かせると思う?」
そう、悪戯っ子の目をして笑う。
紫音さんには敵わない。多分、半分以上は既に予測が付いていて、それでもきっと私から話すのを待っていてくれるんだ…。

「…西園寺涼子さんってご存知ですか?」

「社長の娘で秘書をしてる女性だよね?彼女が何しに来た?」
嫌そうな渋い顔をして、紫音さんが話の先を促すから、やっぱり嘘だったんだと安堵して、先程の会話の一部始終を話して聞かす。

「…なるほど、心奈に手切れ金なんて効くはずないのに、なんで浅はかな女なんだ。」
呆れたように顔で、心底嫌悪感しかないと私に告げる。

「確かに、彼女は度を過ぎたファンで以前から嫌気がさしていたんだ。だけど社長の娘だし、無碍にも出来ずに放っておいていた。害が無さない間は…」
それから彼は事の成り行きを話して聞かせてくれた。

ヨーロッパに居た時、何度か日本に来ないかと、オファーの手紙はもらっていた事。ただそれがきっかけで日本に帰国した訳では決してない事。

写真の件は記憶に無いが、心あたりはあると言う。
「先週末に地方でリサイタルがあった時、なぜか西園寺涼子が来て、仕方なくマネージャーも交えて食事をした。」
その後、飲みに誘われたが断り部屋に戻ると、ワイン瓶を持ってやって来て、勝手に部屋に推し入って来るから、仕方なく一杯だけ付き合うつもりで飲んだら、それからの記憶が無いと言う。

一応予防線を張っていて、俺から連絡が無かったら、俺の部屋を見に来てくれと、あらかじめ予備キーを渡しておいた。
だから、目覚めた時には居なかったけど…。その時に撮られたのかもと言う。

それから紫音さんは直ぐにスマホでマネージャーに連絡を取り、西園寺涼子が戻ったら問い詰めてくれと伝えていた。