「なっ、何よ?」
伊集院さんは腕を組み、鋭い目つきで彗くんを睨みつける。
「言っておくけど、菜乃花は二股なんてしてないよ?」
「えっ。何それ、どういうこと?」
意味が分からないというように、目を瞬かせる伊集院さん。
そんな彼女を見て、彗くんはフッと不敵な笑みを浮かべる。
ま、まさか彗くん……。
鼓動が速まり、何となく嫌な予感がするな……と思っていたら。
彗くんは掛けていた黒縁メガネを外し、長い前髪を手で思いきりかきあげた。
「……っ!」
その瞬間、伊集院さんが息をのむのが分かった。
「えっ!? う、うそ。あなたは……」
目を丸くした伊集院さんが、唇を震わせながら彗くんを指さす。
「みっ、三池財閥の……彗さん!?」
「正解」
「ま、まさか。宇山くんが、三池財閥の御曹司だったの!?」
「そうだよ」
呆然とする伊集院さんに、彗くんがニコッと微笑む。



