「あっ、あの。伊集院さん落ち着いて? これには深い訳があって」
その訳を、今ここでは話すことができないのがもどかしいけど……。
「そんなの、落ち着けるわけないでしょう!? 彗さんという方がいながら、宇山くんとも付き合っているなんて。羽生さん、ほんと最低!」
ダメだ。たぶん今の伊集院さんには、私が何を言ってもきっと火に油だ。
「羽生さんって、二股するような子だったの?」
「最低じゃん」
伊集院さんの怒鳴り声を聞いたクラスメイトたちが、好意的とは言えない視線を私に向けてくる。
自分が悪者みたいで、とにかく居心地が悪い。
どうしよう。こんなときって、一体どうすれば良いの?
自分ではもう、どうすることもできなくて。
私の目に、じわりと涙が浮かんだそのとき。
「……伊集院さん」
それまでずっと黙っていた彗くんが、口を開いた。



