4月上旬の、転校初日の朝。
雲ひとつない青空の下、私は家から学校までの道を走っている。
やばい、やばい。髪を結ぶのに時間がかかって、家を出るのが遅くなっちゃった。
──ガラガラ、ガシャン!
「ええっ!」
う、うそでしょ……。
あともうちょっとというところで、校門が閉まってしまった。
「はい。遅刻した人は、こっちに並んで。私に、自分の名前とクラスを申告してください」
メガネをかけた女性の先生が、遅刻した生徒に向かって声をかけている。
そんなあ。転校初日から、遅刻だなんて……ついてない。
ヨーロッパのお城のような校舎を前に、私は肩を落とす。
こんなことなら、髪結んでこなきゃ良かったかな。
耳のところでふたつに結んだ髪の毛が、ふわりと吹いた春風で揺れる。
私が今日から通う花城学園は、世間でも有名な私立の進学校で、財閥の御曹司やご令嬢も多く通う、いわゆるお金持ち学校。
私は一般家庭で生まれ育ったけど、将来のことを考えて懸命に勉強して、転入試験に合格したのだった。
ああ……当たり前だけど、やっぱりどこの学校でも遅刻には厳しいなぁ。
私がおとなしく遅刻申告の列に並ぼうとした、そのとき。
「君、見ない顔だね?」