「それ、つけてきてくれたんだ?」
彗くんの目は、私のこめかみ辺りにある髪飾りに一直線。
今日は、この前保健室で彗くんからもらった、黄色い花の髪飾りをつけてきたんだ。
「可愛いな」
彗くんの手が、私の髪飾りへと触れる。
「菜乃花、今日はワンピースなんだ? 少しは女の子らしく見えるね?」
彗くんは意地悪にニヤリと口角を上げ、私の耳元に囁く。
す、少しは女の子らしく見えるって……! 彗くんったら、いきなり失礼じゃない?
「ねぇ、彗くん。それってどういう意味……」
彗くんに、私が聞き返したそのとき。
「あら、彗」
40代くらいの上品でキレイな女性が、彗くんに声をかけてきた。



