「はい、できたよ。……うん。やっぱり似合ってる」
「ありがとう」
「菜乃花の髪って、きれいだよな」
彗くんは、私の髪をすくい上げたり。
指の隙間から、パラパラと逃がしてみたり。
彼が私の髪に触れるたび、ドキドキするけれど。
それと同時に、頭をなでられているような心地よさを感じる。
「彗くん、私この髪飾り大切にするね」
「気に入ってもらえたなら、良かった」
メガネの奥の彗くんの目が、細められる。
「菜乃花、体調は大丈夫?」
「うん。たくさん寝たら、元気になったよ」
私は、彗くんに笑いかける。
「それじゃあ、そろそろ帰ろうか。見上に言って、今日は車をいつもよりも近くまで来てもらうようにするから」
「15分くらい、全然歩けるよ?」
「ダメ。倒れたあとなんだから、今日は無茶するな」
私の体調まで気にかけてくれるなんて、彗くんは優しいな。
「ありがとう。それじゃあ、お言葉に甘えて」
私は差し出された彗くんの手を取ると、二人で保健室を出た。



