彗くんが私に差し出したのは、黄色の小ぶりな花をあしらった髪飾り。
「可愛い! もらっていいの?」
「もちろん。これは、いつも俺と一緒にいてくれるお礼だよ。街のショップでこれを見かけたとき、真っ先に菜乃花の顔が浮かんだんだよね」
嬉しいな。私は、彗くんの手にある髪飾りを見つめる。
「菜乃花の名前って漢字で書くと、『なのはな』って読めるだろ? 春に咲く菜の花と、同じだなって思って」
「うん。私、3月生まれだから。自分の名前の由来は、菜の花なんだ」
菜の花の花言葉は、“快活・明るさ・小さな幸せ” だから。
「春に咲く黄色い菜の花のように、明るく元気に育って欲しいという願いを込めて、両親が菜乃花って名づけてくれたらしいの」
「へえ。いい名前だね……そうだ。良かったらこれ、つけてあげるよ」
「いいの?」
「うん。後ろ向いて?」
言われたとおりに背を向けると、彗くんがそっと髪に触れた。
ふわりと髪に触れる大きな手に、くすぐったい気分になる。



