隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい


* *


「位置について、よーい」


ピーッ!


笛の音を合図に、障害物競争の一番滑走の生徒たちが一斉にスタートする。


そうこうしているうちに、自分の順番が近づいてきて、私はスタートラインに立った。


その途端、心拍数が一気に上がる。


うわ、どうしよう……本番だと思うと急に緊張してきた。


額には汗が滲み、心臓がバクバクと大きな音を立てて内側から胸を叩く。


私は、体操服の上から胸の辺りをギュッとつかんだ。


この間の練習のときみたいに、ハードルに足を引っ掛けて、また転んでしまったら……。


そう思うと、怖いけど。


『菜乃花なら、きっと大丈夫だよ』


ふと、私の頭のなかに浮かんだのは、先ほどの彗くんの笑顔。


そうだ。彗くんが、大丈夫って言ってくれたから。きっと大丈夫だ。


私は、真っ直ぐ前を見据える。