隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい



もしかして、私のせい?


そんな考えが、真っ先に頭の中を過ぎった。


一度だけ、葵くんから聞いたことがある。


葵くんは川に来ても、いつも静かに本を読んだり絵を描いているだけで。川で遊んでいるところを見たことがなかったから。


『葵くんは、川で遊ばないの? たまには一緒に遊ぼうよ』と私が声をかけたら。


『ごめんね。俺は、生まれつき心臓が悪いから。川やプールには、入ったらダメだってお医者さんから言われてるんだ』と、葵くんは少し困ったように笑っていた。


そのことを思い出した私は、ここが小学校の教室だということも忘れて、その場に膝から崩れ落ちた。


「うっう」


あのとき、自分が川に入らなければ……。


私が、ちゃんと泳げていれば……。


目から涙が、とめどなく溢れてくる。


「ごめん、ごめんなさい……っ」


葵くんとは、あそこの川でたまに会って話すだけの関係で。


彼がどこに住んでいるのかとか、名前と年齢以外のことは何も知らなかったから。


このとき私はただ、声に出して謝ることしかできなかった。