「ありがとうございました」


膝の手当が終わった私は、保健室を出てひとり廊下を歩く。


「菜乃花ちゃん!」


しばらく歩いていると、廊下の向こうから千春ちゃんが走って来た。


「菜乃花ちゃん、大丈夫!?」


もしかして、心配してわざわざ来てくれたのかな?


「ありがとう。先生に手当してもらったから、もう大丈夫だよ」


私は、千春ちゃんにニコッと微笑む。


「良かったあ。それじゃあ、教室まで一緒に行こう」


千春ちゃんに言われ、ふたりで教室へと向かって歩く。


「宇山くんって、普段は無口だけど。さっきグラウンドで菜乃花ちゃんが転んだとき、真っ先に駆けつけて。菜乃花ちゃんを抱えて歩く宇山くん、素敵だった」


千春ちゃんの話に、先ほど彗くんにお姫様抱っこされたことを思い出した私は、頬が熱くなる。


「あの宇山くんも、やっぱり彼女には優しいんだね? 菜乃花ちゃん、愛されてる〜!」

「そう……かな?」


私は彗くんの本当の彼女じゃないんだけどな……と思いつつも、千春ちゃんの言葉に少し照れながら歩いていると。


「あれ? 速水くん?」


廊下の少し先で、彗くんのいとこの速水くんが、何やらキョロキョロしながら歩いているのが目についた。