隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい



「うう、痛い……っ」


膝を擦りむいたのか、ズキズキと痛む。


『足を引っかけたりして転ばないようにね?』って、彗くんに言われていたのに。その通りになってしまった。


でも今は、痛さよりも恥ずかしさのほうが大きい。


すぐに立ち上がろうとするけど、バランスを崩して上手く立てずにふらついてしまう。


私と一緒にスタートした他のみんなは全ての障害物をクリアし、ゴールへと向かって走っている。


一人だけぽつんと取り残されて、なんてみじめなんだろう。


私は仮にも、彗くんの彼女なのに……。


そう思ったとき。


「大丈夫か!?」


彗くんが、私の元に走ってきた。


「菜乃花、ケガしてるじゃない。保健室行こう」


そう言うと、彗くんは膝裏に手を入れて私を軽々と持ち上げた。