「いいよ、菜乃花。俺にも不注意があったのは、間違いないし」
彗くんが私の前に立ち、手で制された。
「……ごめん。悪かったよ」
「ふんっ。次からは気をつけてよね」
彗くんが謝ると、相手の女の子はようやく歩いていった。
「彗くん……言い返さなくて良かったの?」
「変に言い争ったりして、騒ぎになるのは嫌だったから」
言われてみれば、そうだよね。
彗くんは、わざわざおばあさまの旧姓を使って、変装までして学校生活を送っているのだから。
目立つことは、なるべく避けたほうが良いよね。
「私ったら何も考えずに……ごめんね? 私は彗くんのボディーガードなのに、あの子との衝突を防げなかった」
幸い、彗くんに怪我はなかったけど。もし負傷してたりしたら、私はボディーガード失格だよ。
「ううん。俺は、菜乃花があの子に言い返してくれて嬉しかったよ。ありがとう」
微笑まれ、ドキンと鼓動が大きく高鳴った。
こんなときでも、彗くんは優しいな。



