隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい



それから音楽の授業が終わり、教室に戻るため彗くんと並んで廊下を歩いていると。


──ドンッ!


廊下の角から出てきた人と、彗くんが思いきりぶつかってしまった。


相手の人は走ってきていたらしく、勢いよくぶつかったせいで、彗くんが廊下に尻もちをついてしまう。


「いってえ」

「彗くん、大丈夫!?」


慌てて駆け寄り、彗くんの顔を覗き込んだ私は固まってしまう。


尻もちをついた拍子にメガネが外れ、前髪もかき上げられて、彗くんの素顔があらわになっていたのだ。


やばい。これじゃあどう見ても、宇山彗くんじゃなくて三池彗くんだよ。


「ちょっと! どこ見て歩いてるのよ!?」


ぶつかった派手な髪の女の子が、彗くんのほうに向かって歩いてくる。


「なになに?」

「どうしたの? 大丈夫?」


さらには、周りにいた生徒たちが心配してこちらに歩み寄ってきた。


ま、まずい。彗くんの素顔がバレたら、大変……!