「は、はあ……」
宇山くんのことを、名前で呼ぶ……か。
「それじゃあ、練習。呼んでみて?」
「ええ!?」
練習って、そんなのする必要ある!?
「ええっと。す、彗……くん」
私は消え入りそうな声で、何とか呼んでみた。
「うん。俺はこれから、菜乃花って呼ぶから」
満足そうに微笑む彼に、ドクンと心臓が大きく跳ねた。
うわ〜っ。彗くん、今サラッと私のことを『菜乃花』って呼んだけど。
今まで男の子の友達すらまともにいなかった私にとって、その破壊力は半端ない。
しかも、いきなり呼び捨てって……!
男の子に名前を呼び捨てにされたのは、初めてだよ。
そんなことを思いながら、ボディーガードとして周囲に目を光らせながら歩いていると。
「彗ーっ!」
校門を抜けたところで、誰かが彗くんの名前を呼んだ。



